骨粗鬆症診療とオンライン診療の可能性

2020.09.01
新型コロナ流行で増えたオンライン診療利用

当院は2011年に開設した診療所で、生活習慣病など内科の患者さんが約3割、整形外科の患者さんが約7割を占めています。腰痛などの脊椎疾患をはじめ、骨粗鬆症や変形性膝関節症、関節リウマチなど疾患は様々ですが、高齢者が多いのが特徴です。

オンライン診療は、法人内に皮膚科・美容皮膚科診療所を併設したのを機に、5年ほど前に始めました。当時、オンライン診療はまだ一般に認知されておらず、診療報酬も定まっていませんでしたが、皮膚科では自由診療の男性型脱毛症(AGA)の診療などで活用されており、我々も導入してみることにしました。

それから2年ほどして当院でもオンライン診療を始めました。しかし、皮膚科とは違ってなかなか浸透しませんでした。整形外科の患者さんの大半は痛みや怪我で自宅近くの診療所に通っているため、オンライン診療の必要性を感じない方が多かったのだと思います。オンライン診療そのものがよく理解されていなかったこともあるでしょう。

しかし、こうした状況は新型コロナウイルス感染症の拡大により変化しています。感染拡大前は10人前後だった利用者数が30~40人になりました。一度利用すると、診察や会計の待ち時間がなく、処方箋も自宅に送られてくるため、オンライン診療の利便性を実感する方が多いようです。

システム導入の煩雑さがオンライン診療の課題

オンライン診療の利用者の多くは、生活習慣病の薬や、整形外科疾患で湿布薬を処方している方です。当院では、診療時間内で希望する時間に予約を入れてもらい、対面診療の合間に対応しています。予約の入った日の朝は、事務職員とともに予約時間と患者さんの名前などを確認し、予約時間になったら切りの良いところで対面診療を止めてこちらから患者さんに連絡します。診察後は患者さんの自宅やかかりつけの保険薬局に処方箋を郵送しますが、患者さんが急いでいるときはファクスで保険薬局に送ることもあります。診療報酬の請求も郵送になるため、外来に比べると事務処理は煩雑です。

当院でオンライン診療をご案内するのは、状態が落ち着いていて対面診療でなくても対応できると判断した方や、通院や待ち時間が負担になる方などです。スマートフォンやカメラ付のパソコンなどの情報通信機器を持ち、それらを使いこなせるかも目安の一つになります。これらの操作を医療スタッフが遠隔でサポートするのは困難なためです。オンライン診療を利用するには、まずアプリケーションをダウンロードして名前などの個人情報を登録しなければなりません。保険証のアップロードやクレジットカードの登録なども必要になります。高齢の患者さんの場合は、付き添いのご家族が「アプリ」「ダウンロード」といった用語を知っているか、事前に確認したうえでご案内するか判断します。

こうした事情もあり、当院では30、40歳代と若い世代の利用が中心ですが、なかには84歳の方もいます。この方はお孫さんに設定してもらってオンライン診療を利用しており、ご自身による導入や運用が難しい高齢の患者さんでも、ご家族のサポートがあればオンライン診療を活用できます。ご家族にとっても、通院の付き添いの負担が軽減されるため、オンライン診療は有用です。

オンライン診療における骨粗鬆症治療の可能性

オンライン診療でできるのは、基本的に視診と問診です。血液検査などが必要な糖尿病の疾患などは来院してもらう必要がありますが、視覚情報と問診で診断がつけられる疾患はオンライン診療が向いています。また、当院ではリハビリで来院される患者さんとはリハビリテーション科と整形外科とでテレビ電話を使ってコミュニケーションをとっています。このように、普段から対面診療の必要性が低い患者さんはオンライン診療に移行しやすいと思います。

骨粗鬆症診療では、おおよそ4~6ヵ月ごとに骨密度測定が必要ですが、お薬の変更がない場合の処方など、それ以外では基本的にオンラインでの診療が可能だと考えています。特に経口薬や自己注射剤を処方している患者さんであれば、問診などはオンラインで行い、薬は保険薬局で受け取るといった利用のしかたが可能です。加えて、皮膚疾患などに比べて画像で判断することは少ないため、患者さんの情報通信機器操作の負担が少なくて済むのも利点です。

また、オンライン診療は在宅自己注射を行っている患者さんのフォローアップに役立つと考えています。例えば、注射器にうまく針が付けられないなどデバイスの扱いに困ったときに、画像を介して手技を指導することができます。「冷蔵庫に入れるのを忘れた」「注射製剤が濁っている」「針を刺した場所に青あざができた」などの不安にもカメラを見てアドバイスすることができます。いつでも気軽に相談できるため、患者さんの安心感につながるのが大きなメリットです。

オンライン骨粗鬆症診療の課題と期待

オンライン診療は、情報通信機器操作が必要であること、画像では得られない情報もあることから、全ての患者さんが利用できるわけではありません。また、オンライン診療システムの煩雑さや事務処理の負担など、施設における導入時の課題もあります。骨粗鬆症診療においても、患者さんの多くは高齢のため、情報通信機器の操作がオンライン診療導入を阻む壁になっています。

しかしながら、新型コロナウイルス感染症が拡大しているなか、“来院しなくて良い”“待たなくて良い”というのは患者さんやご家族にとって大きなメリットです。また、オンライン診療が普及して、ホームヘルパーや訪問看護師などもオンラインでのやり取りをサポートできるようになれば、より多くの方が必要なときに適切な医療を受けられるようになります。骨粗鬆症診療の新たな選択肢として、オンライン診療に期待しています。

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