整形外科クリニック経営、ウィズコロナをどう乗り切るか

2020.11.01

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により、社会・経済は深刻な影響を受け、私たちは日々の生活様式の変化を迫られています。医療界をみると、国内では8万人を超える感染者による医療体制の逼迫だけでなく、緊急事態宣言解除後も感染リスクを恐れて医療機関の受診を控える傾向が続いています。ウィズコロナの時代を乗り切るために、整形外科クリニック経営はどうあるべきなのでしょうか。病院経営に詳しいコンサルタントにインタビューしました。

今までの価値観では取り残される 全医療機関がチャレンジャー

「世の中の価値基準が変わりビジネスルールも変わりました。これは病院経営でも同じです。新しいルールに耐えられるか。すでに競争は始まっていると考えられます。全医療機関がチャレンジャーで、今までの価値観では取り残されてしまいます」。医療経営サポート会社「メディエンス」(京都市西京区)の代表取締役、池上文尋さんはそう捉えます。なぜ、こう言えるのか、解説してもらいました。

患者数は完全に元に戻らない

エクスメディオ社(東京都千代田区)では8月下旬、医師のための臨床互助ツール「ヒポクラ×マイナビ」を通して整形外科医にアンケートを実施しました(グラフ1)。

ヒポクラ×マイナビでの整形外科医アンケート結果から

*アンケートについて* 実施会社:株式会社エクスメディオ
アンケート対象:エクスメディオが運営する医師向けサイト「ヒポクラ×マイナビ」の会員医師のうち整形外科と登録しているユーザー
方法:インターネット
実施時期:2020年8月28日 ~ 31日

新型コロナウイルスの影響によりクリニック経営で苦労されていることを尋ねると、「新規患者の減少」が最多で、「既存患者の通院頻度の低下」が続きました。厚生労働省のまとめでは、5月に全国の医療機関を受診した患者数は前年同月から20.9%減少。4月も19.0%減少しており、医療機関の経営を圧迫しています。この傾向はいつまで続くのでしょうか。池上さんは「今までの整形外科と内科クリニックには、ご高齢の方のサロンともいえるような施設もありました。外出控えで通院を減らしても、それほど影響を受けなかった患者さんもいるでしょう。受診控えの傾向は完全には元に戻りません」。

キーワードは密から疎で離への移行

患者さんの数が戻らないとすると、どのような対策が必要なのでしょうか。

オンライン診療を攻めの一手にできる可能性もあります。クリニック経営は地域に一定数の患者さんがいないと成り立ちません。しかし、オンライン診療なら地域の枠を越えて患者さんのパイを拡大できます。

池上さんは「自分たちに何ができるか。考えたうえで対処することが必要です。ウイズコロナを乗り切るキーワードは密から疎で、離への移行です」と解説します。遠隔診療、遠隔モニタリング、遠隔相談、遠隔勉強会。オンラインでこれらのサービスを提供していくことが離です。

ただ、高齢者にはパソコンやスマホに苦手意識を持つ人は少なくありません。池上さんは「娘さんなどがオンライン診療の際、手助けできればいいが、そういうケースばかりではありません。高齢者では電話診療が第1選択となることもあるのでは」といいます。さらに、池上さんは長野県伊那市が取り組んでいる、遠隔診療車に看護師が乗り込み患者さんの家の前まで出向くという「モバイルクリニック実証事業」に注目します。医療機器を備える移動診療車に看護師が乗り、予約したオンライン診療時間に合わせて患者さんを訪問。患者さんは診療車に乗り込み、医師が離れた場所から患者さんをオンラインで診療し、看護師が補助する仕組みです。

一方、院内は疎。完全予約制にして、時間枠を決めて院内にとどまる患者の数をばらけさせます。「他の患者さんとは会いません」をうたい文句にしてもよいのではないかといいます。

多職種の活用と在宅医療の導入

これらの対策は、どの診療科にも応用できることです。整形外科ならではの取り組みはないのだろうか。エクスメディオのアンケートでは、患者減少対策としてさまざまな対策が寄せられており、経営に苦心する整形外科医の姿が浮かびます(表1)。

ヒポクラ×マイナビでの整形外科医アンケート結果から(アンケ―ト方法は上部に記載)

整形外科クリニックでは、看護師以外にも、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など多職種が働いています。患者さんと触れあう時間は医師よりも長いでしょう。池上さんは「患者さんも医師より親しみやすいと感じているだろうし、ふだんからもよく話されています。オンラインでの取り組みには、多職種の人々を前面に出してみてはどうでしょうか」と提案します。理学療法士が講師になって、患者さんが各自の家から参加できる遠隔体操教室を実施するなどが考えられます。

池上さんは在宅医療導入のチャンスだとみます。「患者さんが病院に行くのは嫌だと言うなら、こちらから行きましょうと発想を転換してはどうでしょうか。患者さんの自宅への往復時の交通事故の心配や、クリニック内の人の動きをどうケアするかなど課題はありますが、整形外科の患者さんの多くは足腰に問題を抱えています。通院が辛いと思う患者さんの気持ちをすくい上げる試みです」。同じ観点から、マイクロバスによる送迎サービスも有効ではないかと考えています。

思いついた対策はすべて実施すること

整形外科医が担当する疾患の中でも骨粗鬆症は、患者さんにはわかりづらい疾患といえますが、この9月に日本整形外科学会がロコモ度を判定する臨床判断値としてあらたに設定した「ロコモ度 3」を活用するのもいいでしょう。ロコモ度3は移動機能の低下が進行し、社会参加に支障をきたしている状態を指します。この判断値によって、これまで見逃されていた重篤な運動器疾患見つかることも考えられます。とりわけ骨粗鬆症においては転倒による骨折の予防や防止に役立つ可能性があります。

池上さんは整形外科クリニックの今後の課題として個別化医療をあげます。「最先端の個別化医療の導入というわけではありません。むしろ、患者さんとの対話によって個別の関係を築くような個別化医療です」と説明します。「クリニックを中心に半径100メートル以内に住む住民全員をすべて覚えていらっしゃるようなクリニックは新型コロナの影響を受けづらいようです」と指摘する。そのうえで、「ウイズコロナの時代では、何がビジネスルールになるかまだわかりません。ルールが作られつつあるからです。そのためにも、対策として思いついたことは全部やるべきだと考えております」。

企画・編集:株式会社エクスメディオ、毎日新聞出版株式会社MMJ編集部

『MMJ』について

MMJ(The Mainichi medical Journal)は、臨床の最前線で治療に携わる実地医家へ、世界の最新医療・医学情報をお届けする医学総合誌。創刊は2005年、編集・発行は毎日新聞出版株式会社。

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