医療のやりがいも厳しさも知ってもらったうえで、若い人にも医療に興味を持ってもらえたら

釧路労災病院

釧路労災病院

釧路労災病院
住所:〒085-8533 北海道釧路市中園町13番23号
電話番号:0154-22-7191(代表)
アクセス:釧路駅より車で15分。

――放生先生が医師を目指されたのはいつごろでしょうか。 

高校生くらいの頃になって、何か人の役に立つ仕事をしたいと医師になることを考え始めました。学生時代はサッカーをやっていて、怪我も多かったので整形外科にお世話になることも多く、なじみがあったので整形外科へと進んだように思います。専門は脊椎外科で、指導医として勤務しています。また、スポーツ医や運動器リハビリテーション医、リウマチ医の認定も取得しており、それらの診療も行っています。 

――釧路労災病院は全国32カ所ある労災病院のうちの1つです。労災病院ならではの特徴などはあるのでしょうか。 

労災病院の使命のひとつは勤労者医療で、この地域で働く人々、そしてその家族の健康と安全を守ることを目的としています。そのため、治療によって傷病による就労困難をサポートし、治療を続けながらも社会で活躍できるようにまずは考えていきます。就労されていない高齢者の方への治療も、ご家族の介護負担を減らし、ご家族の就労支援になると考えて日々診療にあたっております。特に道東地域は高齢化率が高いので、健康寿命を伸ばすことがご家族の就労を間接的に支援できると考えています。また、釧路・根室・十勝・網走の4支庁にまたがる道東地区唯一の労災病院で、北海道の約1/3の地域、約100万人の方を対象としています。この広大な面積による距離の問題は大きく、例えば救急に関しても根室からは救急車でも2時間ほどかかります。地域がひとつの集合体として医療圏を成立させないと、住民の方が安心して暮らすことができません。近隣の医療機関と連携をしないと医療が成り立ちませんので、私たちも地域医療を頼りにしていますし、頼られたときには積極的に応えていきたいと思っています。


――放生先生は、医療従事者向けの講演会のほか中高生対象のセミナーなども実施されています。どのような想いで取り組まれているのでしょうか。 

当院はさまざまな医療従事者の研修施設でもありますが、次世代の医療を担う人々の育成も非常に大切だと考えています。現在勤務している人はもちろんですが、これから職業を選択する中高生にも医療への関心を持っていただきたいと、セミナーを開催しました。一般の中高生は医療現場とのかかわりが少なく、敷居が高いと感じているようです。大変な職業ですがやりがいもありますから、医療を通じて貢献したいと思ってもらえたら嬉しいですね。ただ、人の役に立つことに対して喜びを感じられないと、なかなか厳しい職業です。強制できるものではありませんが、医療にはどうしても自己犠牲が必要なタイミングがあります。自分の予定をすべてキャンセルして、患者さんのもとに向かうことも少なくありません。そういう時に「患者さんのためになれたから仕方ない」「困っている人の力になれた」と思えるかどうか。医療従事者としての技術を伸ばしていくことと、自己犠牲の肌感覚を理解してもらうことのバランスも大切だと、私は考えています。 

――本記事はロコモティブシンドロームがテーマとなっていますが、ロコモについての先生のお考えをお聞かせください。 

ロコモティブシンドロームは運動器不安定症の前段階とされています。私の専門の脊椎外科では多くの腰椎疾患の患者さんと接する機会がありますが、正確な情報を伝えることと、その情報の伝え方のバランスが非常に難しいと感じています。「何%の人は治りません」「何%は痛みが続く」と正確に伝えてしまうと、患者さんは希望をもって治療を続けることが困難になります。お伝えするときには、希望を持ってもらいつつも間違った情報にならないように、常に心がけていますね。

――最後に、記事を読んでいる医療従事者の方々にメッセージをお願いします。 

医療は人々が安心して生活するのに不可欠なもので、重要な社会インフラだと思います。勤務体制も含め、ストレスを感じやすい環境かもしれません。そういう中で、お互いの粗を探しはじめるとキリがありませんので、医療の安全に対する厳しさは大切ですが、職業医療人としての価値をお互いに認め合うことがとても大事だと思います。また医療技術が進む中で、テレビなどでみる高度医療と、自分が受ける医療との差を感じている患者さんも少なくありません。その差を埋めていくことが今後大切になると感じています。高度医療への理解を深めつつ、患者さんへ安心していただけるように私たちも頑張っていきたいと思います。

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放生 憲博 氏

北海道大学医学部卒業。北海道大学医学部整形外科に入局後、美唄労災病院、市立釧路総合病院、北海道大学病院などで勤務。また平成17年に医学博士を取得、北海道大学整形外科助教となる。平成22年に釧路労災病院に着任。現在、副院長を務める。

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