DICと基礎疾患

感染症性DIC

目次
北海道大学 名誉教授 丸藤 哲 先生
※監修者のご所属は、制作当時のご所属です。

I. 病態

敗血症は、DICを高頻度に発症する疾患であり、炎症と凝固の相互関係から血管内皮細胞障害を伴い多臓器不全症候群を惹起して症例の予後を規定する重要な病態である。

TNF‐αやIL-1βなどの炎症性サイトカインによって全身性炎症反応症候群(SIRS)は発症するが、これらの炎症性サイトカインが、単球/マクロファージなどに組織因子(tissue factor:TF)の発現を誘導し、外因系凝固反応を活性化する。敗血症に伴う凝固線溶異常の典型がDICである。

敗血症性DICの特徴は、『トロンビンの過剰生成による凝固の持続的な亢進』と『アンチトロンビンやプロテインC、トロンボモジュリンなどの生理的抗凝固因子の減少およびそれらの機能障害に基づく凝固制御機能不全』、『PAI-1の増加によって引き起こされる線溶抑制』である(線溶抑制型DIC)。その結果、微小血管内に播種性フィブリンが形成され、末梢細胞・組織への酸素供給が減少する虚血性微小循環障害に陥る。
それと同時にSIRSが、白血球-血管内皮細胞を活性化することによって、内皮細胞上を回転・接着する過程で活性化白血球が放出する細胞障害性因子(活性酸素種、好中球エラスターゼ、MMPなど)が血管内皮細胞障害を引き起こす。この内皮細胞障害により組織酸素需要に見合うだけの酸素消費が行われず酸素負債が生じ、組織酸素摂取率低下による組織酸素代謝失調が起こる(炎症性微小循環障害)。

これらの虚血性・炎症性微小循環障害、そして消費性凝固障害による出血がMODSの主因であり、その予防と治療のためにはSIRSと凝固(DIC)の両者の制御が必要となる。【図】

multiple organ dysfunction syndrome:MODS

II. 診断(急性期DIC診断基準)

急性期DIC診断基準は、DICを早期診断・早期治療することを目的として作成され、全身性凝固炎症反応連関に伴い発症し、予後に大きな影響を与える臓器不全発症前段階の凝固炎症反応異常をDICとして診断可能とした点に大きな意義がある。

急性期DIC診断基準は、その診断項目として血小板数(減少率)、プロトロンビン時間(比、秒、活性値)、FDPに加えてSIRS項目を含むことから、感染に伴うSIRSとして発症する敗血症性のDIC診断に適している。敗血症で急性期DIC診断基準を満たす症例は予後不良であり、これは敗血症がMODSを発症しやすい重症病態であることがその原因である。このような病態ではDICの早期診断が必要となる。

«急性期DIC診断基準»
1. 基礎疾患(すべての生体侵襲はDICを引き起こすことを念頭におく)
感染症
(すべての微生物による)
組織損傷
外傷
熱傷
手術
血管性病変
大動脈瘤
巨大血管腫
血管炎
トキシン/
免疫学的反応
蛇毒
薬物
輸血反応
(溶血性輸血反応,
大量輸血)
移植拒絶反応
悪性腫瘍
(骨髄抑制症例を除く)
産科疾患
上記以外に
SIRSを
引き起こす病態
急性膵炎
劇症肝炎
(急性肝不全,
劇症肝不全)
ショック/低酸素
熱中症/悪性症候群
脂肪塞栓
横紋筋融解
その他
2. 鑑別すべき疾患および病態

診断に際してDICに似た検査所見・症状を呈する以下の疾患および病態を注意深く鑑別する

血小板減少
希釈・分布異常
  • 大量出血,大量輸血・輸液
血小板破壊の亢進
  • ITP
  • TTP/HUS
  • 薬剤性(ヘパリン,バルプロ酸等)
  • 感染(CMV,EBV,HIV等)
  • 自己免疫による破壊(輸血後,移植後等)
  • 抗リン脂質抗体症候群
  • HELLP症候群
  • SLE
  • 体外循環
骨髄抑制,トロンボポイエチン産生低下による血小板産生低下
  • ウイルス感染症
  • 薬物など(アルコール,化学療法,放射線療法等)
  • 低栄養(ビタミンB12 ,葉酸)
  • 先天性/後天性造血障害
  • 肝疾患
  • 血球貪食症候群(HPS)
偽性血小板減少
  • EDTAによるもの
  • 検体中抗凝固剤不足
その他
  • 血管内人工物
  • 低体温
PT延長
  • 抗凝固療法,抗凝固剤混入
  • ビタミンK欠乏
  • 肝不全,肝硬変
  • 大量出血,大量輸血
FDP上昇
  • 各種血栓症
  • 創傷治癒過程
  • 胸水,腹水,血腫
  • 抗凝固剤混入
  • 線溶療法
その他
  • 異常フィブリノゲン血症
3. SIRSの診断基準
  • 体温

    > 38℃あるいは < 36℃

  • 心拍数

    > 90/分

  • 呼吸数

    > 20回/分あるいはPaCO₂ < 32mmHg

  • 白血球数

    > 12,000/mm³あるいは < 4,000/mm³ あるいは幼若球数 > 10%

4. 診断基準
SIRS 血小板(/mm3 PT比 FDP(μg/mL)
0 0~2 ≧12万 <1.2
<秒
≧%
<10
1 ≧3 ≧8万,<12万
あるいは24時間以内に
30%以上の減少
≧1.2
≧秒
<%
≧10,<25
2
3 <8万
あるいは24時間以内に
50%以上の減少
≧25

DIC 4点以上

注意
  • 血小板数減少はスコア算定の前後いずれの24時間以内でも可能。
  • PT比(検体PT秒/正常対照値) ISI=1.0の場合はINRに等しい。
    各施設においてPT比1.2に相当する秒数の延長または活性値の低下を使用してもよい。
  • FDPの代替としてD-ダイマーを使用してよい。各施設の測定キットにより以下の換算表を使用する。
5. D-ダイマー/ FDP 換算表
測定キット名 FDP 10μg/mL FDP 25μg/mL
D-ダイマー
μg/mL)
D-ダイマー
μg/mL)
シスメックス 5.4 13.2
日水製薬 10.4 27.0
バイオビュー 6.5 8.82
三菱化学メディエンス* 6.63 16.31
ロシュ・ダイアグノスティックス 4.1 10.1
積水メディカル 6.18 13.26
ラジオメーター 4.9 8.4
*LSIメディエンス
日本救急医学会DIC 特別委員会は「救急領域のDIC 診断基準」の引用に際しては、表(1-5)すべてを引用するよう勧告する。

日救急医会誌 2013: 24(2): 114-5. 一部改変

III. 治療

リコモジュリン(リコンビナントトロンボモジュリン)は、敗血症性DICに対する治療薬として期待されている。

リコモジュリンは、ヘパリンを対照とした二重盲検比較試験において主要評価項目であるDIC離脱率で非劣性が検証された初めての薬剤であり1) 、さらに感染症性DICに対して28日生存率がヘパリン群31.6%・リコモジュリン群21.4%であったことは興味深い2)

さらに、炎症を惹起するメディエーターとして注目されているHMGB1をトロンボモジュリンのレクチン様ドメインが吸着し失活する点なども報告されており、リコモジュリンは抗凝固作用のみならず、抗炎症作用を併せ持つことで敗血症性DICに対して大いに期待できる薬剤だと考えられる。

引用文献
Saito H, Maruyama I, Shimazaki S, Yamamoto Y, Aikawa N, Ohno R, Hirayama A, Matsuda T, Asakura H, Nakashima M, Aoki N: Efficacy and safety of recombinant human soluble thrombomodulin (ART-123) in disseminated intravascular coagulation: results of a phase III, randomized, double-blind clinical trial. J Thromb Haemost 2007, 5: 31-41.
Aikawa N, Shimazaki S, Yamamoto Y, Saito H, Maruyama I, Ohno R, Hirayama A, Aoki Y, Aoki N: Thrombomodulin alfa in treatment of infectious patients complicated by disseminated intravascular coagulation: subanalysis from the phase 3 trial. Shock 2011, 4: 349-354.
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