メカニカルな評価と運動療法で、効果に実感のある治療をしていくことが大切

岸川整形外科

岸川整形外科
住所:〒840-0027 佐賀県佐賀市本庄町本庄862-1
電話番号:0952-25-1351
アクセス:佐賀駅バスセンターより、佐賀大学・相応行き、もしくは、佐賀大学・女子短大前行きに乗車し、旭学園通り南で下車徒歩3分

――岸川先生が整形外科を志したのは、どのような理由でしょうか。 

祖父は岸川医院、父は外科胃腸科としてこの地域で開業していました。3代目の私は、高齢化社会へ向かう時代の流れもあり整形外科を選択しました。通算すると、2022年で85周年になりました。私の専門分野は脊椎外科ですが、1999年に開業してからは、それまでの経験を生かした脊椎の保存的治療を中心に診療をしています。2010年ごろにMcKenzie法、別名MDT(Mechanical Diagnosis and Therapy)を知り、運動器のメカニカルな評価を大切にしています。また、骨粗鬆症にも力を入れており、アメリカ骨代謝学会(ASBMR: The American Society for Bone and Mineral Research)では2012年からほぼ毎年、ポスター発表に採択されています。この10年は骨粗鬆症の治療薬や痛みの治療薬が、臨床の場にたくさん登場した10年でもありますが、患者さんの状態に応じた治療薬の選択が求められていると感じます。


――メカニカルな評価に基づく保存的治療のメリットはどのようなところでしょうか。 

2012年まで日本脊椎脊髄病学会の指導医の資格を持っていましたので、たくさんの脊椎手術を経験してきましたが、手術症例数の何倍もの患者さんが保存的治療で治るという事実があります。また、MRIなどの進歩により画像での詳細な分析が可能になりましたので、痛みのメカニズムを分析して、保存的治療を体系化する事ができるようになりました。投薬に代表されるケミカルな治療と運動療法に代表されるメカニカルな治療は車の両輪のような関係で、薬だけではうまく治せない症例も、姿勢指導や運動療法によって治っていくことが多くあります。MDTによる評価は、医師と理学療法士と患者さんが、患者の状態を共有できる言語的な役割をします。患者の姿勢や体の動きと痛みの関係をメカニカルに評価して、患者さん自身が体を動かすことで解決できる問題が多いと思われます。メカニカルな評価に基づくメカニカルな治療とケミカルな投薬の関係がWin-Winの関係であることを、日々の診療の中で実感しています。 

――患者さんのQOLやADLの向上のために心がけていることはありますか。 

運動療法によって患者さん自身が体を動かすことでQOLやADLは向上しますし、それまでできなかったことができるようになれば、治療する喜びも生じます。適切な投薬は患者さんの運動をしやすくし、また、適切な運動によって、投薬量を減らすことができる場合も多くあります。そうして患者さんに運動療法の効果を実感していただくことを目指しています。


――岸川整形外科は、佐賀県景観賞、佐賀県快適建築賞 知事賞を受賞されており、非常に快適な空間の病院とお聞きしましたが、こだわりなどはあるのでしょうか。 

現在の場所に移転開院する際に、建築家がコペンハーゲンの空港を参考に全面Thaiチークの木の床にしました。木のぬくもりがある上に、オンドル式の床暖房など、建築から22年経っても古さをあまり感じないのは、デザインの力だと思います。佐賀水害やコロナ禍対応などの修繕や改善を重ね、より衛生的で清潔な環境を心がけています。 

――入院の患者さんの治療にもこだわっているとお聞きしました。 

当院は、有床診療所ですので、大きな病院では入院にならないような椎体骨折などの患者さんの入院が多いのが特徴です。特に、椎体骨折の初期治療に、非荷重期間を設ける事ができます。寝起きという過剰な椎体を圧潰させてしまう破壊的な刺激を加えず、寝返りという適度な刺激を加えることで、骨の形成を促進し、椎体の圧潰を防いでいるようで、受傷後1年での骨癒合率は97%と高い成績を上げています。

ナースやPTだけでなく、管理栄養士も骨粗鬆症マネージャーの資格を取得していますので、栄養面でのサポートをしています。私も検食で同じものを食べており、とてもおいしくいただいていますよ。栄養を確保しながらおいしく感じられる食事になっていると思っています。 

――最後に、日々患者さんと向き合っている医療従事者にメッセージをお願いします。 

ほとんどの運動器の痛みは姿勢や運動で変化しますから、患者立脚型の運動療法が治療の中心であるべきだと考えています。運動器を動かすことができるのは患者さんだけで、運動療法の前後の状態を共有できれば、その効果を患者さんが実感できます。治してあげる、という驕りを捨てて、「患者さん自身で治せるように、運動療法を指導させていただく」と考え、私は日々の診療に臨んでいます。もちろん、患者立脚型の運動療法だけでは解決できない場合もあります。それでも、患者立脚型の運動療法を中心に投薬や装具などの治療法を再構築すれば、今まで以上にその効果がわかるようになるのではないかと思っています。
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岸川 陽一 氏

九州大学医学部卒業。九州大学医学部整形外科に入局、関連病院にて勤務。医長として佐世保共済病院、佐賀県立病院を経て、1999年に岸川整形外科を開院。現在、院長を務める。


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