それぞれの専門分野が連携し、情報を共有することが患者さんのリスクを減らす

大阪暁明館病院

大阪暁明館病院
住所:〒554-0012 大阪府大阪市此花区西九条5丁目4-8
電話番号:06-6462-0261(代表)
アクセス:JR・阪神「西九条駅」下車、徒歩約3分

――森脇先生が医師になろうと思った理由、そして脳神経外科に進まれたきっかけをお聞かせください。 

高校生の頃、両親が医療のお世話になった時期がありまして、付き添いなどで病院に行く機会が多くなり、医療現場を目の当たりにするうちに医学の道に進みたいと考えるようになりました。そして、生涯にわたって社会貢献できるような、自分が取り組むべき分野を考えたときに、今なお未知の部分がある脳や中枢神経に興味を持ちました。そこは医師になりたいと思った当初からの変わらない指針であり、その想いに従って今も取り組んでいます。未知な領域がある中で、患者さんの改善が得られたときには大きな喜びがありますし、それを学会などで報告させていただいて将来の医療に繋がっていくことにはとてもやりがいを感じています。 

――森脇先生のご専門である脊椎や脊髄は整形外科でも診療されていますが、脳神経外科とどのような違いがあるのでしょうか。 

現在の制度では、整形外科専門医出身と、私たちのような脳神経外科専門医出身のものが同一のライセンス(脊椎脊髄外科専門医)を取得するようになっております。整形外科の場合は骨折や骨の病気、筋肉の疾患などからの発展であるのに対して、脳神経外科では脳や脊髄そのものの疾患などからの発展といった歴史があり発展ベクトルの違いはありますが、これからはその重なった部分からはじまる新たなベクトル、共通の脊椎脊髄外科としての発展がどんどん広がっていくように思いますね。

――こちらの病院では、手術だけでなく術後のリハビリや日常生活のスタイルにも配慮されているとお聞きしました。患者さんに対して、どのように取り組まれているのか教えてください。 

まずは大阪の都市部にありますので高層建築になっており、フロアごとに機能的に分かれています。急性期と呼ばれる手術を検討するような方の病棟、手術直後の方が過ごされる病棟、回復期リハビリテーションの病棟と、入院手術から退院して日常に戻られるまでの総合的な治療が可能になっていることは、患者さんにとっての大きなメリットだと考えています。そして、私たちは脳神経外科がベースですが、整形外科の先生方やリハビリ専門の方などとも治療にあたって綿密な連携を取っています。加えてこの院内だけでなく、地域で開業されている先生方とも地域医療連携ができるように取り組んでいます。やはり、地域にお住いの方の視点からすると、かかりつけの先生がスタート。我々の診療を経てまた地域に戻っていただくという、連携がとても大事だと考えています。 

――患者さんと接する際に、意識していることはどんなことでしょうか。 

私のポジションとしては外科医ではありますが、患者さんにとって保存治療など外科的な手術以外の方法も含めて、どの選択肢が望ましいかを考えるようにしています。選択肢として、外科治療以外の道をつなげておくのは大切なことだと思いますから、情報提供をしながら患者さんとともに選んでいくことを大切にしています。また、診察室周辺で得られる情報は限られているので、ご家族やヘルパーさんなどがご一緒にいらっしゃったときは、ご自宅の様子をうかがったり、リハビリスタッフ、理学療法士、看護師などからもリアルな状況を聴いたりして、さきほどの選択肢につなげるようにしています。診察室だけではわかりえないことを、周囲の人に助けていただきながら方針を考えていくことを心がけています。

――ロコモティブシンドロームについては、どのように考えていらっしゃいますか。 

やはり骨粗鬆症に関わる疾患がひとつのテーマになるでしょう。コルセットなどによる保存治療がベースになりますが、高齢の方が何週にもわたって痛みがあったり、動けなかったりすることが続くと合併症なども起こってきます。外科治療が望ましい方には、かかりつけの医療機関からこちらにお越しいただいて治療する流れになりますが、その後の再発予防、骨折予防についてはやはり治療にかかわるすべての方の理解が必要です。飲み薬だけではなく、注射などの治療に関してはまだまだ浸透が必要ですから、リエゾンサービスなど認知の拡大を含めて活動しなければなりません。そして、ロコモについては骨折などの部分的な評価だけでなく、全身のバランスに関する評価が必要です。整形外科的な見方だけでなく、内科的であったり、理学療法的であったりと、いろいろな視点から総合的にアプローチしていかないと、ロコモに関する課題解決は難しいのではないでしょうか。 

――いろいろな視点を得るためにも、連携が重要ということですね。最後に、本記事を読んでいる医療従事者の方にメッセージをお願いします。 

どのようなことでも、役割分担をしてしまうと壁ができてしまうもの。その垣根を越えて、治療に関わる医療関係者が連携をして情報共有ができること、治療のメリットやデメリットをお互いによく情報共有していい流れを作ることが、患者さんのリスクを減らしていくことにつながります。お互いの専門分野の情報を開示して共有していく中で、私自身も脳神経外科出身の脊椎脊髄外科医として貢献していけたらと思います。 

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森脇 崇 氏 

香川大学医学部卒業。大阪大学大学院医学系研究科を経て、大阪労災病院、大阪大学医学部附属病院、河内総合病院脳神経外科、大阪大学国際医工情報センター、若草第一病院脊椎脊髄神経外科へ勤務。現在は、大阪暁明館病院脳神経外科脊椎脊髄センターにて医長を務める。

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