ただ手術を勧めるのではなく、患者さんに合った治療法をいろいろ提案できる医師でありたい

東戸塚記念病院

東戸塚記念病院
住所:〒244-0801 神奈川県横浜市戸塚区品濃町548-7
電話番号:045-825-2111(代表)
アクセス:JR横須賀線・湘南新宿ライン「東戸塚駅」より徒歩約3分

――山崎先生が医師になりたいと思ったきっかけをお聞かせください。

小さいころ、母に野口英世の伝記を読んでもらって感銘を受け、そこからはずっと医師になりたいと思っていました。何か人と違うことをしたい、役に立つことをしたいという気持ちも合わさって、医師に憧れましたね。父が建築関係の仕事だったからか、もともと何かを作ったり組み立てたりするような作業は好きだったので、整形外科は私に合っていたように思います。大学では股関節が専門で、教授が人工関節に注力されていたのでその流れで取り組んでいます。脊椎に関しては、高校の同級生も医師でして、彼に誘われて同じ医局に入りました。彼は背骨が専門で、手術を手伝う中で覚えていって自分でも取り組むようになっています。患者さんが目に見えて良くなって社会復帰していく姿を目の当たりにできた時には、医師としての喜びが感じられますね。

――東戸塚記念病院では、どのような診療方針で取り組まれているのでしょうか。

この病院ではもともと中程度の外傷の患者さんが中心でした。交通事故や労災など比較的若い方の骨折が多かったのですが 、社会が変化してきて怪我しないような安全管理がなされるようになり、交通事故も減ってきています。一方で、最近は高齢化社会になり骨粗鬆症関連の骨折や圧迫骨折が増えています。昔であれば、安静にしてただ寝かせておくだけで、そのまま寝たきりになってしまうケースもありました。現在は、なるべく早くリハビリをして復帰していただくために、最新の機器を導入してより安全で、BKP(経皮的椎体形成術)などの低侵襲の手術をしたりしています。  
――1日の診察数や手術件数が多く、昨年度は増床されているとお聞きました。たくさんの患者さんがいらっしゃるのは、どのような理由からでしょうか。

当院では数年前から「24時間で手術をする」というのを掲げています。入院したら当日か翌日には手術をしてしまいます。大腿骨近位部骨折などが対象ですが、早く手術をすると予後が良くなる傾向があります。そして早く手術をすると、次の患者さんもどんどんいらっしゃるので、結果的に手術数が伸びているという状況です。海外では以前から取り組まれていましたが、近年では48時間以内の手術に保険点数がつくようになっているので、日本でも傾向が変わりつつあると感じています。増床に関しては、季節の変わり目に高齢者の転倒などが増え、特に冬場は満床になることもあります。そうすると、救急を受け入れることが難しくなる。可能な範囲で増床しましたが、この地域の患者さんを受け入れるためには、本当はもっと増やせたらと思っているくらいです。

――患者さんファーストのスピーディな対応を続けた結果なんですね。本記事はロコモティブシンドロームをテーマとした記事ですが、ロコモの患者さんに接する際に意識していらっしゃることはありますか。

まずはご本人やご家族にしっかりとご理解いただくことです。素早く処置をして患者さんの予後を良くしていくのは一つのモットーですが、繰り返し骨折を起こさないために骨粗鬆症について理解していただいて、治療を続けていくことをお願いしています。骨粗鬆症は自覚症状があまりありませんから、定期的に骨密度や血液検査の数値などをお伝えして、治療によって良くなっていることをちゃんとお伝えするように意識しています。また、患者さんにどのような選択肢があるのか、いろいろ提示できるような状況にはしておきたいと考えています。とにかく手術をするというわけではなく、まずは痛みをとりましょう、生活を整えましょうなど、患者さんに寄り添い、信頼関係を作っておくのは大切なこと。そして、患者さんのためにと考えるのではなく、自分が患者さんの立場になって考えることです。かといって、治せるから、自分だったらこうするから、と希望しない治療を積極的に進めるのも違います。同じ70代でも、たくさん旅行に行きたい人もいれば、家で穏やかに過ごしたい人もいます。限られた医療資源を有効に使うためにも、患者さんが望む生活に合った治療法を選択できるようにしていたいと思います。

――最後に、記事を読んでいる医療従事者に向けてメッセージをお願いします。

最近はいろいろな新しい治療法も出てきています。そういう治療法を、高齢者だからと決めつけることなく、一般の成人の方と同じように取り入れています。麻酔や薬もかなり良くなっていますし、インプラントなども改良されてますから、そこはもっと積極的になってもいいのではないでしょうか。背骨の手術も、内視鏡を使って手術創も1センチくらいで済むものもあります。痛みがあると動くのも億劫になりますから、そういうところも理解して、患者さんのためになる新しい治療を取り入れていくという気持ちが大切ではないでしょうか。
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山崎 謙 氏

宮崎医科大学を卒業後、昭和大学藤が丘病院整形外科医局に入局。その後医局の派遣病院を経て、東戸塚記念病院に着任。整形外科部長、副院長を歴任後、2014年より院長を務める。




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