県内唯一の特定機能を持つ大学病院として専門診療を担い未来を拓く

筑波大学附属病院膠原病リウマチアレルギー内科は、茨城県内唯一の特定機能病院として、各地の病院から紹介された重症患者と、地域の基幹病院では診断が付かなかった患者の早期診断、早期治療に取り組んでいる。臨床、研究、教育の3つにバランス良く取り組むことを医局のモットーに掲げる第3代教授の松本功氏は、他の診療科と連携した専門外来の開設や、動物モデルを使った基礎研究の結果をヒトの新たな病態に関連付けるトランスレーショナル研究の実践など、独自の視点から医局に新しいミッションを課している。

筑波大学医学医療系 膠原病リウマチアレルギー内科学講座

筑波大学医学医療系 膠原病リウマチアレルギー内科学講座
医局データ
教授:松本 功 氏
医局員:28人
病床数:20床
外来患者数:約2700人/年
関連病院:22病院

 「県内唯一の国立大学法人大学病院として、また特定機能病院として、当院では県内外の重症化した患者さんの診療に当たってきました。また、膠原病・リウマチは難病が多く、各地区の基幹病院から診断が付かず紹介されてきた患者さんを当院で受け入れ、早期診断・治療に当たっています」(松本氏)。その一端として、筑波大学では附属病院難病医療センターの中で、膠原病リウマチネットワークを立ち上げ、県内の関連病院と緊密に連携を図っている。

 膠原病リウマチアレルギー内科では、多臓器にまたがる病態を理解し治療する上で、各内科や整形外科、皮膚科、小児科といった他科との連携が欠かせない。診療科の枠を超えて互いの課題を解決していく診療チームとしての結束を図っているほか、特殊外来として産婦人科と協力し県内で初めて「膠原病合併妊娠外来」も開設した。

 また膠原病リウマチアレルギー内科は、身体所見を詳細に調べることが重要であるため、1人当たりの外来診療時間が長くなりがちだ。病棟の患者も重症患者が多く、医局スタッフの勤務時間は長引く傾向にある。「時間外勤務を抑制するには、人員を確保して医師1人当たりの担当患者数を減らすことが必須です。ただし大学では、臨床だけでなく、研究も教育も進めなければいけません。科としては、この3つをバランス良く進めていくことが求められますが、私自身はそれぞれが連動し、チームとして機能しなければいけないものだと考えています」と松本氏。「具体策の検討はこれからですが、免疫というキーワードを共通項とする当科は、特に臨床と研究がつながりやすい領域です。個々人の日々の研鑽から得られたクリニカルクエスチョン(CQ)という窓をみつけ、そしてそれを解決するモチベーションを持つことを科全体で重要視しています」とも付け加える。


実験室での研究活動風景。医局のスタッフには、臨床と研究、教育にバランス良く取り組ませるのが松本氏の方針だ。

 他科と連携しやすい学風が実現した専門外来

 膠原病リウマチアレルギー内科の新たな特徴として挙げられるのは専門外来だ。先に触れた通り、2022年1月には膠原病合併妊娠外来を開設。県内初の膠原病をフォローできる妊娠専門外来で、現在2人の医師で担当している。関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、抗リン脂質抗体症候群、シェーグレン症候群などの膠原病疾患は、20歳代の女性にも発症することが珍しくない。妊娠・出産に不安を抱える膠原病患者に対して、早期から妊娠を視野に入れた治療計画を立てて、産婦人科と協力しながら出産に対応し、産後も継続して治療に当たっている。

 他科連携をスムーズに進められるのは、筑波大学の医局の担当領域の分け方に理由があると松本氏は感じている。「古い歴史がある大学は、第一内科、第二内科などナンバー内科が比較的広い領域をカバーしていたので、科内の医師間連携である程度の対応が可能でした。これに対し筑波大学の医局は、最初から臓器別の内科に分かれていたので、他科との連携がなくてはならないものでした。以前から診療科の壁を越えた協力関係があったため、各内科、産婦人科や整形外科との協力体制の構築もスムーズに進みました」と語る。

膠原病リウマチアレルギー内科学講座のスタッフたち。松本氏(前列中央)は、ここで20年以上を過ごしてきた。

全身に及ぶ免疫ネットワークの面白さを医学生に伝える

 医局スタッフの教育に関して松本氏は、主治医・指導医と若手医師のつながりを大事にしている。「膠原病は希少疾患が多く免疫抑制薬の使い方も特殊なので、疾患ごとに専門の医師がチームを組んで患者さんを受け持つ傾向があります。一方、リウマチは患者さんの数が多く外来での治療が主体となるため、どのスタッフでも診療できる体制の構築を目指しています。そのために病棟での治療計画は合議制で決めているほか、医師と患者さんが1対1で接することが多い外来で対応に迷ったときは、先輩医師に気軽に相談できるような雰囲気作りに努めています。もちろん、面倒見のいいメンバーが揃っています」と松本氏。

 茨城県は人口対比で医師が少なく、膠原病リウマチ領域でも専門医がいない地域が残っている。地域医療を実践する専門医を育成することも、医局の重要な役割だ。「県内に十分な専門医を派遣できるようにするためにも、医局のスタッフを増やしていかなければなりません。しかし、つくばエクスプレスの開業で都心へのアクセスが良くなったことで、臨床研修を県内でなく東京などで行う医師が増えています」と松本氏は打ち明ける。

 そこで松本氏が努めているのが、免疫学、及び関連するヒト病態の面白さを医学生に伝えていくことだ。「僕らの基礎になるものは免疫学です。その臨床バージョン、臨床免疫学は研究と臨床が極めて近い領域だと思います。しかし、免疫反応自体は画像診断などが存在しないため、視覚化できずどうしても“難しい”という意識を持たれがちです。自己免疫疾患で起きてくる細胞連関としての全身応答、そして諸臓器で起きている“場”の炎症をつなぎ合わせて診ることにより、全身を診られる医療ができると私は考えていますので、講義や実習を通じそのことが少しでも伝わるよう努力しています」と松本氏は話す。

医局でのカンファレンス風景。患者の治療計画は合議制で決定するが、その検討はだれもが自由に発言できる雰囲気の中で進められる。

トランスレーションとフィードバックでつなぐ基礎と臨床

 松本氏が研究面で重視することは、動物モデルで得た知見をヒトにトランスレーションしてフィードバックすることだ。「動物モデルを使った基礎研究の目的は、生体内で起きていることの細かい明確化です。その結果を診療に生かすためには、ヒトで起きている事象との関係性を見いださなければなりません。我々は蓄積した動物モデルのエビデンスを持っていますので、それらを最新の情報や技術と共に常にアップデートし、自分たちが作り出した結果をうまく統合させて、CQを解決することが必要です。我々が目標とする疾患制御に到達するためには、基礎研究と臨床研究を並行して進める必要があります」と強調する。

 研究に着手するきっかけ作りとして、松本氏は情報収集に対するモチベーションを維持することを医局スタッフに求めている。「膠原病リウマチは、日々の診療や研究で疑問を持つことが多い領域です。個人差が多い疾患群ですが、分からないことを分からないままにせず、収集した情報を的確にくみ上げて自分の中で昇華させていく経験を積んでほしいですね。それが臨床や研究を実りあるものとし、未来の医学の発展にも寄与するはずです」(松本氏)。

 コロナ禍での研究指導はオンラインが主流だったが、2022年4月からは対面での指導を徐々に増やしている。「オンラインと違って対面だと、若手が話したがっていることや考えていることを把握しやすいと改めて感じます。一方、若手にとっても、自分の話を聞いてくれる人の反応を見て感じることは大事です」。こう語る松本氏は「私が参加する医局の会合は研究領域を限定せず集まってもらっています。そこでは医局スタッフに積極的に意見を出してもらうため、コーディネーターに徹するよう心がけています」とも言う。

 2022年3月、膠原病リウマチアレルギー内科では、医局のホームページをリニューアルした。担当医表など患者向けの情報はもとより、診療情報や研究業績、後期研修医としての入局希望者や大学院進学希望者に向けたメッセージなども幅広く掲載している。「ホームページは随時更新していますので、閲覧をお願いします。興味を持ったら、ぜひとも我々にコンタクトしてください。臨床免疫学の醍醐味を一緒に楽しみましょう。皆さんの応募を心よりお待ちしています」と松本氏は呼びかけている。

1976年に開院した筑波大学附属病院。以来、増築を重ねて現在の病床数は800床に至る。

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 松本 功 氏

1991年北海道大学医学部卒業。千葉大学医学部第二内科、同大学院、フランス・IGBMC研究所、ハーバード大学医学部ジョスリン糖尿病センター、さきがけ研究21研究員、筑波大学医学医療系膠原病リウマチアレルギー内科学講座講師・准教授を経て、2022年より現職。


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