――飯田先生はなぜ整形外科医になろうと思われたのでしょうか。また整形外科医としてのやりがいはどのようなところに感じますか？

 サッカーをずっとやっていたこともあり、これまでに怪我などで頼った先生もいましたから、自分にとっては身近だった整形外科を選びました。専門は膝ですが、手術が終わって患者様が元気になられた姿を見られるのは、整形外科医の醍醐味だと感じますね。

 ――こちらの病院は2018年にリニューアルし、整形外科に特化されたとお聞きしました。どのような患者様がいらっしゃっているのでしょうか。

 基本的に整形外科は膝腰に痛みを抱えている方が多く、半数くらいが65歳以上の方になります。また、平野区は大阪市でも最も人口の多いエリアであり、怪我や骨折をされたお子様なども来院しますので、患者様の年齢幅でいうと、0歳から100歳まで幅広く来院いただいています。

 ――手術などを控え、不安になられている患者様もいらっしゃると思います。患者様に接する際に意識されていることはどのようなことでしょうか。

 まずは信頼関係の構築ですね。どこが悪いのかをきちんと診て治療方法もすべて説明した上で、患者様には治療方針を選んでもらうことになります。信頼関係が無ければ患者様も納得しないと思いますから、話し方や説明の仕方には気を付けていますね。その上で、”笑わせること”も大事なことだと思っています。ずっと真面目に話していてもなかなか伝わりませんから、雑談の中で笑ってもらい、患者様との距離感を縮め信頼関係の構築をはかっています。今はずっとマスクをしていて表情も見えないので、トークで笑顔を引き出しにいくことは意識しています。

 ――手術とともに、リハビリにも力を入れている病院かと思いますが、患者様にリハビリを頑張ってもらうための工夫などはされていますか？

 リハビリには家族のサポートも非常に大事だと考えています。以前は自由に入院患者様とご家族様が面会出来ましたが、最近はコロナ禍ということもあり、家族であってもリハビリを頑張っている患者様に会えないんですね。個人的な話になりますが、私の祖父も先日入院しまして、その際病院から祖父の様子が動画で送られてきました。患者家族の立場としてすごく安心できたので、自分の病院でも導入を決めました。やはり家族が見ていてくれることは、患者様にとってもモチベーションになります。そして、我々スタッフ側の意識としても、患者様に寄り沿う事で患者様の能力を最大限に引き出し、リハビリへのモチベーションを引き出す事にも努めています。プロ意識をもって患者様に接することが、患者様のリハビリへのモチベーションになる。結局、患者様にやる気を出していただかないとリハビリはできないですからね。

 ――最近ではロコモティブシンドローム（ロコモ）が注目されていますが、患者様に接する中でロコモの問題を実感される場面はありますか？

外来にいらっしゃる患者様を診ていて、もう少し早くお越しいただいていたら、手術やもっといろいろな治療ができたのに、と思うケースが結構あります。痛みをずっと我慢していらっしゃるんですね。なので、まずは痛みや違和感があれば早めに来ていただくようにお伝えしたいです。そして、ロコモという言葉を使わないにしても、例えば骨粗鬆症においては骨密度検査をすることなど、多くの人に「健康でいる寿命について気をつけよう」という意識を植え付けていくのはとても大事なことだと思います。そして、毎日外に出て、できれば5,000歩は歩いてほしいですね。

 ――最後に医療従事者に向けてメッセージを頂ければと思います。

 みんなで一緒になって体操したり動いたりということが自然にできる、医療従事者を中心とした地域の健康教室のような取り組みは、現状のコロナ禍では、まだ難しいので、YoutubeやSNSを利用して行っていけたらいいなと思っています。

次に、患者様との信頼関係の部分も、医師だけが築いていくものでもありません。看護師や理学療法士などのコメディカルが患者様とのコミュニケーションの際に、患者様の性格や人となりを伝えてくれることもあります。

患者様に関わる全ての医療従事者がどんどんコミュニケーションをとって、信頼関係をつくっていくことが大事なのでしょうか。
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飯田 高広 氏

滋賀医科大学卒業。大阪市立大学（現大阪公立大学）医学部付属病院整形外科、大阪市立総合医療センター整形外科、大阪府済生会中津病院整形外科、大阪府立中河内救命救急センター、白浜はまゆう病院整形外科医長を経て、高遼会病院の理事長に着任。