「広く深く」診る医療のためにも、多職種での連携は非常に大切

京丹後市立弥栄病院

京丹後市立弥栄病院
住所:〒627-0111 京都府京丹後市弥栄町溝谷3452-1
電話番号:0772-65-2003
アクセス:峰山駅より丹後海陸交通バス間人循環線で約15分

――森本先生が医師を目指されたきっかけ、そして現在の医師としてのやりがいについてお聞かせください。 

医師を目指し始めたきっかけは、父の願いでした。身内には誰も医師はおりませんでしたが、なぜか高校生になってから私に医師になれ、と言い始めまして、それも親孝行と進路を決めました。当初は小児科を希望しており、頭のてっぺんからつま先まで患者さんのすべてを診ることができる小児科医に憧れがありました。ところが、診療科を決める頃に私が骨折してしまって整形外科に入院することになり、そのご縁もあって整形外科に入局しました。小児科への想いもあって、医師になってすぐの頃は小児整形で先天性の股関節脱臼なども診ていましたが、膝関節やリウマチなどもいろいろと教えていただいたので、現在は関節外科を中心に骨粗鬆症や痛みの治療などに努めています。

――弥栄病院では早くから骨粗鬆症外来を設置されているとお聞きしましたが、どのような想いで診察をされているのでしょうか。 

骨粗鬆症に関しては、2010年ごろから新しい薬剤など治療の選択肢が増えてきました。そういう中で、古い治療のままでは患者さんに申し訳ないということで、看護師や理学療法士、放射線技師などの多職種を巻き込んで骨粗鬆症外来を10年ほど前からはじめました。京丹後市は地域柄としてもご高齢の方が非常に多く、骨粗鬆症による骨折もとても多かったので、看護師などのスタッフとしても避けては通れない問題という認識があったと思います。超高齢化で、ロコモティブシンドロームを通り越したような患者さんばかりですから。個人的には、国保古座川病院に赴任した1992年には骨密度測定装置を持ち込んで骨粗鬆症への取り組みを始めていて、患者さんのデータを取るなどをしていました。ただその頃は今のような有用な薬はまだなかったので、患者さんに対してもいいアプローチができなかったように思います。最近は、骨折してから入院するよりも、骨折をしないように事前に対策していくほうが医療費も抑えられるというのが基本的な考え方になっていると思います。今後は高齢化が進む中で、多職種がいろいろな観点で新しい治療にも積極的に取り組んでいくことが大切になると考えています。 

――患者さんに接する際、大切にしていらっしゃることをお聞かせください。 

患者さんは、治療をして治れば終わり、と考えていることが多いです。ですが、高齢者だとそうシンプルではありません。痛みをコントロールできて、自分のことを自分でできるようになることが目標になるんですね。私たちが目指す目標はそこなんだよ、と患者さんにもしっかりと理解していただくことをとても大切にしています。その目標のためであれば、妥協をしない。例えば、もう高齢だからと人工関節を避けようとする方もいますが、人工関節によってご自分で生活ができるようになるのであれば、ご高齢の方にも積極的に人工関節手術をご提案しています。100歳を超える方もたくさんいらっしゃる地域です。「今更手術は…」という80代の患者さんにも「あなたも、あと15~20年は生きるんだから」とお声掛けして、自分で自分のことができる生活を目指していただいています。医師は診察室で患者さんと接することが多いものです。ですが若いころに、リウマチについて教えていただいた大先輩の医師から「患者さんの自宅に行ってこい」と言われたことがあります。すると、バリアフリーが整った広い家の方もいれば、坂道の多い裏路地に入った昔ながらの段差の多い家の方もいらっしゃる。そうなると、同程度の状態でも患者さんの目標は変わりますよね。そこで言葉では理解していた患者さんはひとり一人違う、ということを改めて実感させられました。その実感は、今の診療にもつながっています。そういう意味で、若いうちに地方の地域医療を経験しておくことは非常に大切なのではないでしょうか。その地域ならではの特徴や状況に寄り添った、生活の見える医療を体感しておくことは、医師として経験しておくべきだと思っています。

――本記事を読んでいる医療従事者の方にメッセージをお願いします。 

繰り返しになりますが、患者さんを診るということは、患者さんの生活を見るということ。生活に即した医療、それに加えて福祉や介護のデザインを考えるまでが、患者さんを診るということだと私は考えています。そのためには、多職種で連携し、カンファレンスを開いて患者さんの生活がよりよい方向に進んでいくように検討することが大切です。入院患者さんの場合は、患者さんのご家族も含めて何度もカンファレンスをします。いろいろな患者さんがいますから、医療というのは「広く浅く」でも「狭く深く」でもなく、「広く深く」なければなりません。そのためにも、今後は多職種との連携を意識しながら、医療に向き合うことが大切になるのではないでしょうか。
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森本 忠信 氏

関西医科大学を卒業後、整形外科に入局。新潟県立中央病院、和歌山県国保古座川病院(現:くしもと町立病院)の院長などを経て、弥栄町国民健康保険病院(現:京丹後市立弥栄病院)整形外科に着任。

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