Informed Choiceによる自己注射の導入

2021.03.10

富士整形外科病院
院長 渡邉 英一郎 先生
薬剤部 課長 伏見 佳久 先生
看護部 統括部長兼外来看護師長 磯部 英美 様
〒417-0045 静岡県富士市錦町1丁目4−23

磯部看護師(左)、渡邉院長(中央)、伏見薬剤課長(右)

OLS(骨粗鬆症リエゾンサービス®)の失敗と成功

---富士整形外科病院に関して教えてください
渡邉 英一郎 院長(以下渡邉院長):当院は年間1,300件を超える整形外科手術を施行する急性期医療から、回復期リハビリテーション病床を整備し在宅復帰支援までを担う、ケアミックス型の病院です。外来は8つの診察室を配し慢性疾患も多く診察しており、年間約1,000名程度の骨粗鬆症患者さんが来院されています。

---OLSはいつ始められましたか?
渡邉院長:2014年に日本骨粗鬆症学会で骨粗鬆症リエゾンサービス®(以下;OLS)が提唱されましたが、その理念に賛同するかたちで、当院でも同時期に活動を開始しました。当院の所在する富士医療圏は、厚生労働省の医師少数区域に指定されており、更に看護師等の医療マンパワーも潤沢ではない地域ですので、潜在的にチーム医療が発展する下地がある地域と言えます。

---OLSの失敗に関して教えてください
伏見 佳久 薬剤課長(以下伏見薬剤課長):実は1度目のOLSは失敗に終わりました。大きな原因は3つあると思っています。

1つ目はゴール設定の誤りです。やりたい事が多すぎて、全部をカバーしようとしていました。病院の機能として骨折治療が主であるにもかかわらず、一次骨折予防を主なゴールに設定した結果、病院の機能としての方向性と全員の意識の統一にずれが生じてしまいました。

2つ目は熱量の偏りです。本人の意向を確認しないままチームに召集したこともあり、やらされ感が出てしまったスタッフがいたことも原因です。

3つ目はルールや規則を徹底出来なかったことです。あらゆる部署から参加してもらっている手前、ルールや規則が明確にされていないと、業務が忙しいからという理由で会議への参加を断られてしまったりしました。

--- どのようにやり直したか教えてください
渡邉院長:シンプルに前述の3つの課題を解決する形で設計し直しました。まず、ゴールを二次骨折予防に設定して意識の統一を図り、メンバーを公募制にして意識が高い人を集め、ルールや規則を徹底してマネージメントしていきました。2019年から第4次OLSチームが発足していますが、定期ミーティングも滞りなく実施され、チーム毎の規則も作ってしっかりした組織になってきていると実感しています。

--- これからOLSを始めようとしている施設にアドバイスをお願いします
渡邉院長:経験から感じている重要なポイントは、まずOLSはドクターが中心になって活動するという考えを一旦わきに置くことです。もちろん薬剤の処方などの絶対的医行為はありますが、それ以外の事は極力メディカルスタッフにお任せして裁量権を持って活動してもらうことがチームとして熱量が上がるコツだと思っています。

Informed Choiceの導入

--- Informed Choiceとは何ですか?
伏見薬剤課長:薬剤の疾患への適応だけでなく、社会的背景などについても患者さんと話し合い、その患者さんにとって最適な薬剤を見定め医師に提案していく、患者さん参加型の薬剤選択のプロセスのことです。現在は、入院患者さんのみに実施しています。

--- Informed Choiceを始めた経緯を教えてください
伏見薬剤課長:当院だけではないと思うのですが、医師が忙しく患者さんの社会的背景まで踏み込んでお話しする時間がどうしても取れないということが多々あると聞いています。患者さんが納得していない治療をしても継続しないと思いますので、医療者側もある程度時間を使い、しっかり納得してもらう必要があると思い始めました。

--- Informed Choiceの成果を教えてください
伏見薬剤課長:当院の退院後の骨粗鬆症治療の継続率は元々約9割と高かったのですが、Informed Choiceを実施した群では97%の継続率になっており、更に改善されていました。また、Informed Choice群では退院後の注射薬の継続が良好であり、興味深い効果だと感じています。

テリボンオートインジェクターの導入と今後の展望

--- テリボンオートインジェクターを導入したきっかけを教えてください
磯部 英美 看護師(以下磯部看護師):当院ではリウマチ患者さんも診ており、医療者側もオートインジェクターの使用方法の指導は慣れております。そんな中、ケブザラと同じようにキャップを外して打つだけのテリボンが出たというので興味を持ちました。関節リウマチで手が不自由であったり、手元のおぼつかない高齢の患者さんも多いので、針の付け替えをせずにキャップを外して打つだけで済むというのは骨粗鬆症の患者さんにとっても魅力的だと思ったのが導入のきっかけです。

--- テリボンオートインジェクターを導入して変わったことはありますか?
磯部看護師:変わったというより、慣れている形に近づいたという方が適切かもしれません。多くのリウマチ治療薬はオートインジェクターが多く、私たちも指導し慣れているので、医療者側も自然に準備して自信を持って患者さんに薦めることができるようになったと感じています。

--- OLSに関して今後の展望について教えてください
渡邉院長:私たちは謙虚な姿勢を忘れず、失敗から学び、課題を分析して改善していくことで組織として成長していっていると思います。マネージメントの部分でも工夫しており、各個人のモチベーションを尊重するようにしています。200名を超える職員全員に「二次骨折の予防」というビジョンを浸透させるのは大変な作業ですが、一人一人の医療人としてのモチベーションに働きかけ、各々が“その人らしく”活躍できる場を創っていければ、それは必ず実現できると考えています。


テリボン皮下注28.2μgオートインジェクター製品情報
https://akp-pharma-digital.com/products/list/155

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