社会医療法人 札幌清田整形外科病院
病院長 片平 弦一郎 先生
看護師 榊 由紀子 様
〒004-0841 札幌市清田区清田1条4丁目1番50号
※ご所属は、制作当時のご所属です。
フローチャートを作ったきっかけ
片平弦一郎先生(以下片平先生):私たちの病院では、新型コロナウイルスの影響で患者さんが来院を少し控えられていますが、それでも月に1,000名ほどの骨粗鬆症患者さんを診る機会があります。
榊由紀子看護師(以下榊看護師):当院では骨粗鬆症患者さんをチームで治療するためにOLS活動も積極的に実施しておりますが、患者さんの数も多く、必ずしも骨粗鬆症マネージャー®が自己注射指導に当たれるわけではないため、治療の均一性に課題があると感じていました。
片平先生:当院の骨粗鬆症マネージャー®は全部で7名おり、彼らは各種骨粗鬆症治療剤の違いの説明や、自己注射指導ができますが、ほかの看護師は骨粗鬆症関連の知識を豊富に持っているわけではない為、患者さんへの受け応えなどの業務が骨粗鬆症マネージャー®に集まってしまうという課題がありました。
榊看護師:骨粗鬆症マネージャー®ではないですがOLS活動をしているスタッフは30名ほどおり、「自己注射指導や患者さんからの質問に困ったら骨粗鬆症マネージャー®に任せる」という形で色々頼られることは多いのですが、そのやり方では、外来患者さんもたくさんいらっしゃる中で、患者さんの満足度を下げないで診ていくことが難しいと感じていました。
片平先生:自己注射指導が統一されていないことで起きた問題としては、実際にテリボンオートインジェクターを導入しはじめた頃、立て続けに患者さんから導入を断られるということがありました。
榊看護師:最初に立て続けに断られたことから、「これはまずい」ということで、患者さんが受け入れてくれなかった理由を調べ、なぜ受け入れてくれなかったのかをまとめていきました。
片平先生:家族の同意が得られないとか、注射自体が怖いという理由が多く、医師や看護師が上手に均一に説明できていなかったことが問題でした。
榊看護師:導入を成功させるには第一印象が大事だと思っていて、全ての医師、看護師が、患者さんが不安になるポイントを減らせるようにすることが理想形だと考えて、片平先生を中心に導入の為のフローチャートを考えました。
フローチャートの導入
片平先生:看護師が誰でも均一に説明できるようにという目的で、テリボンオートインジェクターのフローチャート(図1)を作成しました。大きくは、まず私たち医師が説明をして、導入を迷われる患者さんがいた場合は骨粗鬆症マネージャー®と話をしてもらうという流れです。
榊看護師:多くの患者さんは医師から「注射」と聞くと、針が出ている一般的な注射器を思い浮かべて、「それは出来ません!」と怖がられる方が多く、説明から時間が空くと想像をふくらませてしまうので、極力時間を空けないで「こういうものですよ」と練習用キットをお見せするようにしています。
片平先生:今まで63例に導入の説明をして導入できなかった患者さんは6例でした。
榊看護師:その6例も導入しはじめた慣れない頃の患者さんでした。初期の失敗の代表的なものは、説明しすぎてしまっていたことです。最初に細かいことまで説明してしまうと、患者さんの印象としては「なんだか大変な薬だ」という印象になってしまいます。なので、まずは受け入れられるまでは「キャップを外して打つだけだよ」という感じで簡単に説明して、まずはやってみたいと思ってもらってから細かい指導に移るようにしています。
片平先生:薬剤の効果の違いに関しては私から患者さんに説明するのですが、看護師に質問がいくことも多いです。そのためフローチャートに加えてオリジナルの資料も作り、骨粗鬆症マネージャー®以外でも均一な説明が出来るようにしています。
榊看護師:例えば、内服でもいいんじゃないかというような患者さんには、「今までのお薬は骨が減るのを防ぐお薬だけど、このお薬は骨を作る方に力を入れているんですよ」というように効果の違いを説明すると、皆さん、必要性を分かってくれます。
片平先生:後は副作用に関して説明しすぎると多くの患者さんは必要以上に怖がってしまいますので、もちろん副作用の説明はしなくてはいけませんが、既往歴などを見てバランスを考えたうえで説明をするようにチーム全体に指示を出しています。
リエゾンパスの導入
片平先生:ただ、フローチャートを導入したからといって全ての問題が解決されたわけではありませんでした。例えば、導入後にドロップアウトしてしまうかもしれないような患者さんがいた場合、骨粗鬆症マネージャー®は患者さんの不安や質問に応えられるのですが、骨粗鬆症マネージャー®ではない看護師が「副作用でやめたい」などの訴えを聞いた時に対応出来ないことは問題だと考え、対応できるようにする為のより大きな枠組みのリエゾンパスを作成しました。(図2)
榊看護師:実は、割と自己注射を継続されていても何かしらの症状を訴える患者さんもいらっしゃるので、そのような場合に「こうした方がいいよ」という説明をするのは看護師側にもとまどいがあったりします。このリエゾンパスは2020年10月から運用していますが、かなりうまく回っている印象です。
片平先生:新型コロナウイルスが流行していることもあって(2021年1月現在)、通院しなくても良いテリボンオートインジェクターに切り替えられる患者さんも結構います。私たちはフローチャートとリエゾンパスを使って導入の説明しておりますが、ほとんどの患者さんが導入出来ていますし、脱落する患者さんもあまりおりません。
榊看護師:テリボン週一回製剤で何かしら課題があって継続できないような患者さんも今の所テリボンオートインジェクターに切り替えて問題なく継続出来ています。繰り返しになりますが、患者さんが持っている「自己注射」のイメージとテリボンオートインジェクターのデバイスはイメージがかけ離れているので、なるべく早く練習用キットを見せるようにしています。そうすると「あ、こんな感じなんですね」と受け入れていただけるケースがほとんどです。
片平先生:一つ一つ課題を見つけてフローチャートやリエゾンパスを作成し運用してきました。ここまでやっても全ての課題がなくなったわけではないので、現状に満足せずに一つ一つ対処していき、導入率や継続率100%を目指し、より良い骨粗鬆症治療が出来るようにしていきたいと思っております。
テリボン皮下注28.2μgオートインジェクター製品情報
https://akp-pharma-digital.com/products/list/155