患者様とのコミュニケーションに対する心構え

2020.12.04

亀岡市立病院
脊椎センター長 成田 渉 先生
〒621-8585 京都府亀岡市篠町篠野田1番地1

※ご所属は、制作当時のご所属です。

これまでのキャリアと脊椎外科医としての想い

Q: 先生の所属施設について教えてください。

成田渉先生(以下成田先生): 当院は亀岡市の基幹病院であり、私の所属する整形外科は院長の玉井先生を含めて5名で運営しております。その中でも脊椎センターは脊椎疾患に特化しております。2018年に立ち上げて以来、私一人で運営しており、初診外来から手術・術後管理・ドレーン抜去・退院後の外来フォローアップまで私が責任を持って対応しております。手術は多い月では30例以上実施しており、今年は新型コロナウイルスでやや落ち込みましたが年間300例を超える見込みです。頸椎から腰椎まで幅広い痛みを主訴とした患者様がいらっしゃいますが、多くは高齢者でその約半分程度は骨粗鬆症疾患を合併している印象です。地域の開業医様からご紹介いただく患者様だけではなく、私が治療した患者様からの口コミで来ていただく患者様も多く、亀岡市だけではなく遠方からの患者様と出会う機会に恵まれております。

Q: 先生のキャリアについて教えてください。

成田先生: 私は自治医科大学を卒業しており、まだ20代のうちにたった一人で地域基幹病院の整形外科を任されていました。通常であれば外科医が独り立ちするには最低10年は必要といわれています。しかし、私はまだ4年目で「へき地医療」に従事するよう命じられ、整形外科常勤は私一人で外来・病棟・手術をこなさなければなりませんでした。 通常であれば手取り足取りの世代である28歳で独り立ちしたのです。傍から見ればどうみても若すぎる医師です。少しでも患者様の信頼を得るためにいろいろな工夫をしてきました。

Q: 患者さんの信頼を得るためにどんな工夫をしましたか?

成田先生: 患者様にいかに信頼してもらうかという点で、まず心がけているのは挨拶です。挨拶の基本は相手の目を見て、笑顔で明るく声をかけることです。まず診察室に患者様が入ってきた時は「はじめまして」「おはようございます」と必ず挨拶をさせていただきます。また、患者様をお待たせしてしまうことも多いので「お待たせしました、成田と申します」と名札をきちんと見せて、ちゃんと一礼してから診察するようにしています。挨拶はもともと仏教用語で“心をひらく”という意味があります。最初の印象がいいと、その後の診療もスムーズになります。人間の第一印象は3秒で決まるといわれています。「メラビアンの法則」をご存知でしょうか。アメリカの心理学者アルバート・メラビアンの研究によると、話し手が聞き手に与える影響のうち、「言語情報(話している内容)」が7%、「聴覚情報(話し方、声のトーンなど)」が38%、「視覚情報(表情や立ち居振る舞い、見た目など)」が55%で構成されているのだといいます。手術のご説明や治療薬を患者様にお薦めする時も患者様の目線でしっかり納得するまでお話しさせていただいています。

Q:脊椎手術とはどんな手術でしょうか?

成田先生:脊椎外科という領域は、3次元で正確な解剖の理解とドリルで正確に骨を削る技術が要求されます。直径4ミリ、毎分8万回転のドリルで、石の中に隠れた立体的な豆腐を確実に削り出す、そんな作業をするお仕事です。私は今まで約3,000例の脊椎手術を執刀していますが、ちょっとでも手元が狂うと取り返しのつかない合併症を生じてしまう場合がありますので毎回気を抜くことは出来ません。外科医は手術のスキルはもちろん大事ですが、サービス業としての側面もあると思っています。患者様からの信頼を獲得出来なければ本来必要な手術も出来ません。手術はもちろん完璧にすることを心がけていますが、手術をさせていただく患者様に対して、安心して手術を受けていただけるためのコミュニケーションがすごく大事だと思っております。若い時から一人でやってきた中で、技を極めながら患者様に熱意を持ってしっかり向き合っていくことで手術の技術だけではなく、コミュニケーションのスキルを向上させてきました。

Q : 今後の展望や目標について教えてください。

成田先生: 常に最新技術の習得に努めてまいりましたが、現在では新しい手術手技や器械の開発、教育、VRなどの技術開発にも取り組んでいます。また各学会の理事や世話人などを務めさせていただく中で、より安心安全な脊椎手術を広めるための広報活動やホームページの作成なども行っています。脊椎外科は「3K」といわれており、リスクが高い領域であるため志望者が少ないです。専門医の数が必要な患者数に対して不足しており広報活動が重要と考えています。

Q: テリボンの週1回製剤の治療における課題はありますか?

成田先生:週1回のテリボンに関してもともと感じていた課題は、患者様への薬物治療による負担でした。骨折の危険性の高い骨粗鬆症の患者様にテリボンの週1製剤を処方しておりましたが、遠方から来られている患者様には通院が負担になることや、当センターの外来が非常に多忙であり週に1回の患者様のフォローが難しいということがありました。開業医様と異なる点としては、当院のような地域の基幹病院には時間をかけて来られる方が多いことがあげられます。よって、週に1回注射のためだけに病院に来てもらうというのは申し訳ないという想いが強くありました。先述したように患者様は紹介されていらしていただくことも多く、難治性の症状に悩まされていたため治療薬に関しては比較的受け入れが良いという点はありますが、毎週欠かさず通院投与が必要という点に関して躊躇される患者様もおられました。

Q: テリボンオートインジェクターの自己注射の説明で特に実践していることはありますか?

成田先生: 「ミラーリング効果」をご存知でしょうか。話している相手と同じ行為をしたり、同じ発言を繰り返すと受け入れやすくなるというテクニックですが、そうした手法を用いると手術や治療薬の説明に対しての受け入れが良いと実感しております。高齢の患者様も多く自己注射という点を懸念される方もいらっしゃいますが、ミラーリングなどの様々な手法を含めて私の経験で患者様の目線でしっかりお話しして、投与に関する説得をしてスムーズな導入を心がけています。常に患者様を意識しており、一度同じゲージの針を自分に刺して試しました。それで痛みの程度を確認しているので患者様に自信を持って説明出来ています。

Q: 具体的なテリボン導入の手順はどうしていますか?

成田先生: PTH製剤を導入する意義や副作用を説明して患者様にご納得いただいてから、注射室で患者様にIC用タブレットで動画を見ていただきます。そのあと看護師や薬剤師から導入の説明をしております。今まで多くの症例に使わせていただいていますがこの手法でスムーズに導入出来ております。

Q : 最後にテリボンについてコメントをお願いします。

成田先生: テリボンの週1回製剤に加えて、現場の課題を解決するテリボンオートインジェクターという製剤が出ました。自己注射製剤として工夫され、患者様目線で作られたデバイスになっていると思いますが、高齢者の方が多いので骨粗鬆症という疾患に対しての注射薬の使用に対して嫌がる患者様もいると思います。少しでも抵抗感を減らしてあげるように丁寧に説明して患者様のためになるということをご理解いただくことが大切だと思っています。


テリボン皮下注28.2μgオートインジェクター製品情報
https://akp-pharma-digital.com/products/list/155

閲覧履歴
お問い合わせ(本社)

くすり相談窓口

受付時間:9:00〜17:45
(土日祝、休業日を除く)

当社は、日本製薬工業協会が提唱する
くすり相談窓口の役割・使命 に則り、
くすりの適正使用情報をご提供しています。