急性期病院ならではのOLS活動を実践

2022.02.01

我汝会さっぽろ病院
医師(副院長):室田 栄宏 先生
外来看護師長 :田中 知子 様
   看護師 :鈴木 江里 様
理学療法士  :青井 紀之 様
薬剤師    :西牧 武志 様
〒065-0005 北海道札幌市東区北5条東11丁目16番1

※ご所属は制作当時のものです。

──初めに、我汝(わじょ)会さっぽろ病院の概要を伺えますか。

室田栄宏・副院長(以下、室田先生):我汝会さっぽろ病院は、2007年に開院した整形外科単科の急性期病院です。患者数の増加を受けて、2020年9月にJR苗穂駅前に新築移転し、2022年1月には、69床から88床に増床しました。上肢、下肢、脊椎それぞれの分野に精通した専門医が、1日当たり170人の外来患者を診察する一方、年間約1700件の手術を手がけています。

(左)我汝会さっぽろ病院副院長の室田栄宏先生。  (右)外来看護を担当する田中知子師長。


2018年に院内でOLSチームが発足

──2018年には院内に、骨粗鬆症リエゾンサービス(OLS)を手がける専門のチームを置かれたそうですが、そのきっかけを教えてください。

田中知子・外来看護師長(以下、田中師長):5年前、日本骨粗鬆症学会が認定する骨粗鬆症マネージャーの制度があることを知り骨粗鬆症について学んでいく中で、当院での骨粗鬆症患者さんへの治療介入率が低いことを認識するようになりました。治療の介入率や継続率を高めていくには多職種で関わっていくことが必要ではないかと考え、チームを立ち上げることにしました。

 2018年4月に私自身が骨粗鬆症マネージャーの認定を受けた後、他の看護師や薬剤師、理学療法士にも声をかけ、翌年に認定を取得してもらいました。また、その後に入職した看護師のうち、3人が既に認定を受けていたので、OLSチームに加わってもらうことにしました。現在、骨粗鬆症マネージャー7人を含む総勢11人(医師2人、看護師5人、薬剤師1人、理学療法士2人、管理栄養士1人)で活動しています。

──我汝会さっぽろ病院におけるOLS活動は、具体的にはどのようなものでしょうか。

青井紀之・理学療法士:月に1回、OLSチーム会議を行い、部署間の情報共有やマニュアルの作成と見直しを行っています。また、当院では治療経過などを記録するために独自の「美骨手帳」(写真)を作成しているのですが、骨粗鬆症の治療を開始する際には、この手帳と各種のパンフレットを併用して、患者さんや家族への説明、指導を行います。理学療法士は、転倒による骨折のリスクを評価するためのロコモチェックなどを担当しています。

我汝会さっぽろ病院オリジナルの「美骨手帳」。治療経過などを記録できる。

  

 大腿骨近位部骨折の患者さんに対しては、日本骨粗鬆症学会と脆弱性骨折ネットワークが作成した「FLS(骨折リエゾンサービス)クリニカルスタンダード」に基づくプロトコルに沿って治療介入を行っています。また、人工関節手術などでは、骨密度や骨代謝マーカーを術前に測定しており、その検査結果を受けてOLSチームに治療介入の依頼があります。骨粗鬆症治療が必要と判断した患者さんに対しては、入院中から一次骨折の予防に取り組んでいます。なお、多職種間で情報共有ができるように、電子カルテ上で「骨粗鬆症データベース」を作成して活用しています。

──医師の立場から室田先生は、OLSチームの活動をどう見ていらっしゃいますか。

室田先生:外来診療では患者さんに接する時間が限られるため、医師が得られる情報は限られてしまいます。これに対し、診療室の外でOLSスタッフが必要な情報を拾い上げてくれたり、患者さんから事前にお聞きした情報を教えてくれたりすることで、診断や治療の幅が広がることを実感しています。医師が言うことを患者さんがどこまで理解しているかは正直、把握しづらい面があるのですが、OLSチームのメンバーが介在することによって、患者さんの理解が深まるというメリットが間違いなくあると感じています。

 また、骨粗鬆症患者さんに対して、OLSチームのメンバーがそれぞれの立場から専門知識を活用して治療介入できることも利点だと思います。医師は骨粗鬆症の重症度診断に基づき薬物治療や装具療法、手術療法を行いますが、専門知識を持ったスタッフが多岐にわたる生活指導を行うことで、患者さんの治療意識向上を図り、その結果骨折予防につながると考えています。

──OLSチームの立ち上げから3年がたち、見えてきた課題はありますか。

鈴木江里・看護師:これまでの活動によって、当初は40%台だった椎体骨折後の骨粗鬆症への治療介入率が70%台にまで上がってきました。しかし、目標である治療継続率90%には達しておらず、治療からドロップアウトしてしまう患者さんが少なくありません。また、外来では患者数が多く、骨粗鬆症患者さん一人ひとりに十分な時間を割くことができず、治療開始時の説明をしっかり行えていない現状がありました。

 骨粗鬆症治療からドロップアウトしたり、来院されなくなってしまう患者さんの共通点として、疾患や治療に対する理解不足があることは否めません。ですから骨粗鬆症治療に対する意識付けのために、十分な時間をかけて説明することが非常に重要であると考えています。

──こうした課題を解決するために、取り組まれていることはありますか。

田中師長:当院では2021年5月に「骨粗鬆症外来」をスタートさせました。外来を担当している2人の骨粗鬆症マネージャーが月に2回、患者さんに対して治療の意識付けによる治療継続率向上を目的に詳細な説明や指導を行っており、患者さんの理解向上と医師の負担軽減の双方で成果を上げています。

今回の取材に応じてくださった我汝会さっぽろ病院のスタッフ。右下から時計回りに室田副院長、田中師長、薬剤師の西牧武志氏、看護師の鈴木江里氏、理学療法士の青井紀之氏。

 

簡単な使用法が医療関係者の負担を軽減

──近年、骨粗鬆症の治療にテリパラチド製剤を選択するケースが増えているようですね。

西牧武志・薬剤師:はい。テリパラチド製剤の中でも、最近はテリボンオートインジェクターの処方が増えています。こちらは、キャップを外して押し当てるという2ステップの簡単な使用法が特徴で、導入にあたって患者さんの理解が早く、指導時間が短くて済みます。その結果、患者さん一人ひとりにかける時間にゆとりができ、多くの骨粗鬆症患者さんとしっかり向き合えるようになりました。そして、従来の週1回の注射製剤と比較して、副作用による脱落例が少ない印象で、治療継続という観点からも有用であると考えています。このように、簡便な投与方法という点と脱落例の少なさという点において、テリボンオートインジェクターはとても良いデバイスだと思っています。また、自己注射が可能になったことで通院回数を減らすことができ、患者さんの負担軽減にもつながると思います。

──指導にかかる時間が短くて済むということですが、実際はどのくらい短縮したのでしょうか。

田中師長:1回の指導に時間がかかることも珍しくなかったのですが、テリボンオートインジェクターでは10分程度、長くても15分で指導を終えられます。その時間を他の業務に回せることができ、忙しい外来では非常に助かっています。また、ご自身で注射することが難しかった片麻痺の患者さんであっても、テリボンオートインジェクターなら使えますので、治療介入できる患者さんの裾野が広がりました。

──医師の立場から見た、テリボンオートインジェクターに対する感想を伺えますか。

室田先生:この製剤が発売される前は、自己注射製剤について患者さんに話をすると、注射と聞くだけで難しそうに感じる患者さんが少なくありませんでした。しかし、「このように、2ステップで完了しますよ」とテリボンオートインジェクターの使い方をデモンストレーションしながら説明すると、受け入れてもらいやすいですね。そのおかげで、PTH製剤で治療できる患者さんの裾野がかなり広がった印象を持っています。

──最後に、我汝会さっぽろ病院におけるOLS活動の今後の展望をお聞かせください。

田中師長:これから重要になるのは、地域の医療機関との連携だと考えています。例えば、かかりつけの先生が診ていらっしゃる骨粗鬆症の患者さんに、半年に1回は当院で詳細な検査を受けてもらい、その検査結果をかかりつけの先生にフィードバックするというような地域連携ですね。

2020年に札幌市東区の病院で構成する「さっぽろ北部骨粗鬆症リエゾンサービス」というネットワークを立ち上げました。当院はその事務局を務めているのですが、このネットワークを通じて内科や整形外科といった診療科の垣根を越えた病診連携を実現し、当院のOLSチームの目標である「治療継続率90%」を目指していきたいと考えています。

我汝会さっぽろ病院のOLSチームのメンバーたち。(同病院提供)

 

テリボン皮下注28.2μgオートインジェクター製品情報
https://akp-pharma-digital.com/products/list/155


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