「怖い」イメージ覆す 続けられる骨粗しょう症治療を追求するチーム  「運動器ケア リエゾンサービス」とは

2022.07.04

運動器ケア しまだ病院
病院長:勝田 紘史 先生
理学療法士:大塚 愛 様
病棟看護師:石部 由紀 様
病棟看護師:松井 香緒里 様
外来看護師:仲村 礼子 様
大阪府羽曳野市樫山100-1

※ご所属は制作当時のご所属です。

運動器ケアに加え高齢者医療をしまだ病院の特徴へ

勝田紘史 病院長(以下、勝田先生):当病院は所属医師23人のうち12人が整形外科医の整形外科専門病院です。病床数は88床で、内訳は一般病床43床、地域包括ケア病床45床。外来患者数は1日当たり約400人です。現・理事長の島田永和先生が病院長に就任された40年ほど前から、スポーツ整形を中心に診療してきました。適切なタイミングで必要な手術をするのはもちろんですが、「できるだけ体を動かしながら治す」「過剰な安静は『敵』である」との方針のもと、機能障害が基になって起こっているケガや障害を、運動療法で改善することに力を入れています。2016年に病院を建て替えた際に、診療方針に病院機能を合わせる形で、リハビリテーション施設の機能などをさらに充実させました。

運動器ケア しまだ病院には1日400人ほどの外来患者が訪れる(同病院提供)


  現在もスポーツ整形は当院の大きな柱ですが、近年は運動器の不調を訴える高齢者が地域に増えており、高齢者医療がもう1つの柱になってきました。骨粗鬆症やフレイルなど高齢者の運動器疾患は若い世代よりも問題を総合的に捉える必要があるため、1人の患者さんに多職種が連携して対応する体制を整えています。

 私は、スポーツ整形と高齢者医療には診療を進める上で大きな相違点はないと考えています。スポーツ選手の骨折治療は「骨がくっついたら終わり」ではありません。選手にはしっかりと元のパフォーマンスを取り戻してもらうことが必要です。それは高齢者医療でも同じです。高齢者の骨折も診療のゴールは、単に骨をくっつけることではありません。例えばお孫さんの結婚式に出たい、趣味の山登りを再開したい、お友達とバス旅行に行きたいといった患者さんの希望をかなえてあげられるように、一緒に目指していくことが目標になります。そのために不意のケガが起こらないようにし、元気に生活をしていただくよう最大限配慮しなければならず、二次骨折の予防はADLにも直結することから重要な要素になります。運動器ケア しまだ病院は「その人がその人らしく自分の人生を全うすることを支援する」という理念を掲げているのですが、これはスポーツ整形にも高齢者医療にも通じると思うのです。

 2次骨折予防注力、リエゾンチームを立ち上げ

大塚愛 理学療法士:勝田病院長からお話があったように、2019年に多職種からなるリエゾンチームを立ち上げ、特に高齢者の骨粗鬆症2次骨折予防に取り組んでいます。他の病院では同様の多職種チームを「骨粗鬆症リエゾン(サービス)チーム」と呼ぶことが多いかもしれません。当院では骨粗鬆症への対応だけでなく、「運動器をしっかり鍛えて転倒防止につなげる」ことを重視する観点から、「運動器ケアリエゾンサービスチーム」と命名しています。チームには医師のほか、外来・病棟看護師、理学療法士、診療放射線技師、管理栄養士、地域連携部門のスタッフなど総勢15人ほどが加わります。大所帯ですが、1カ月に1回の対面ミーティングと院内イントラネット上の掲示板をうまく活用して、しっかり情報共有しています。

 外来受診する高齢者が増えてくる中、リエゾンチーム立ち上げ以前からも、私たち理学療法士は、患部のリハビリテーションだけなく、サルコペニア評価を行っていました。しかし、その情報が、院内で共有できておらず、チームアプローチが十分にできていませんでした。

 その結果、「転倒して救急搬送されてきた高齢患者さんの履歴を振り返ると、過去に運動器疾患で外来リハビリーションを受けていた方だった」といったケースが実際にあったのです。「情報共有がしっかりできていれば転倒を防げたのではないか」「これではいけない」との問題意識が院内で高まり、それが「運動器ケアリエゾンサービスチーム」立ち上げの原動力になりました。

 勝田先生:運動器ケアリエゾンサービスチームを立ち上げた後に、「骨粗鬆症椎体骨折(OVF)プロトコル」も導入しました。これは医療の標準化に役立っています。当院では12人の整形外科医が勤務しているので診療方針がバラバラになりかねません。診断、手術、治療薬の選択、コルセット装着の有無、リハビリテーションの期間などをフローチャートに沿って決定し、必ず脊椎の専門医のチェックを受けるプロトコルを定めたことで、当院のどの医師が診察を担当しても質の高い標準治療を受けていただけるようになりました。

理学療法士の大塚愛 氏(左)、病棟看護師の石部由紀 氏(右)

テリボンオートインジェクターの導入、指導の工夫

石部由紀 看護師(以下、石部氏):当院のテリボンオートインジェクターの導入実績は、2019年の発売から現在までに累計120例以上です。当初は外来での導入が大半だったのですが、最近は入院患者さんへの導入も増えています。2020年度は21例、2021年度(2021年9月まで)は11例が入院期間中の導入でした。

 主治医がテリボンオートインジェクターの処方を選択した患者さんについては、まず看護師が、患者さんご自身で自己注射を続けられるかどうかをしっかり確認するようにしています。いくら良い治療薬でも患者さんが正しく使えなかったり、継続できなかったりすれば意味がないからです。具体的には認知症の有無、家族がどれくらい患者さんをサポートできるかなどを見極めて医師に伝えます。

 説明に関しては、患者指導用の資材「AK-Pad」がとても役立っています。AK-Padは製造販売元である旭化成ファーマが提供するタブレット端末で、テリボンオートインジェクターの概要、使い方、使用後の廃棄の仕方についての説明動画などが収められています。患者さんにタブレットを渡して、ご自身で見てもらうことができます。

 看護師がすべてを説明すると時間がかかりますし、担当の看護師によって説明内容に差異が出る危惧もあります。これに対してAK-Padを使えば、すべての患者さんに一通り過不足ない説明ができます。もちろん動画視聴後には患者さんから質問を受けて、看護師が丁寧に補足説明をしています。

松井香緒里 看護師:私は病棟看護師の立場で、入院患者さんへの説明に、ほぼ全例でAK-Padを活用しています。患者さんの多くは「注射」と聞くと大きな針がついたシリンジを想像し、「怖いです」「私はやりません」と反射的に言いがちです。そこで「どんなものか、まずはこれを見てみましょう」とAK-Padを渡して動画を見てもらうのです。針が外から見えないことが分かると「これだったら怖くない」「できそうだ」「1回やってみようかな」と言ってくださる患者さんが結構多くいます。そう言ってくださった患者さんには「じゃあ、今日は看護師が介助するので1回打ってみましょうか」とお話しします。

 入院患者さんについては、説明初日に1回目の注射までいけなくても、患者さんと家族の理解度を徐々に高め、数日かけて導入できればよいという方針です。じっくり時間をかけられるのが入院期間中の導入の良い点だと思います。また、導入初期の副作用に、看護師が24時間体制で対応できることも大きな利点なのではないでしょうか。

石部氏:テリボンオートインジェクターは1回に1本の使い切りなので、入院期間に応じて処方できます。そういった面でも、病棟で導入しやすい薬だと思います。

仲村礼子 看護師:私は外来看護師の立場で、外来患者さんへの説明にAK-Padを活用しています。患者さんの利便性や経済的な負担を考えると、外来では数日かけて導入というわけにはいきません。基本的には1日で完結を目指します。テリボンオートインジェクターをよりイメージしてもらいやすいように、まず実物(デモ器)を示し、体に5秒押し付けて離す自己注射の動作をしてみせます。そして「注射はあっという間に終わりますよ」「針は見えない構造ですよ」と要点を話してから、AK-Padで動画を見てもらうようにしています。

 先ほど入院患者さんの話がありましたが、外来患者さんでもやはり、テリボンオートインジェクターの実物や動画を見てもらうと抱いている注射のイメージが変わります。注射針が直接は見えないこと、手技がとても簡単そうであることが分かると、自分もできると思って1回目の注射をされる患者さんが多いです。打ち終わった後には、「本当にあっという間だった」「いつ針が刺さったのか分からなかった」「これで終わり?」などとおっしゃる患者さんがほとんどです。

石部氏:入院期間中にテリボンオートインジェクターを導入した患者さんが退院して、外来に移行する際には、病棟看護師と外来看護師の間で患者さんの情報をしっかり共有するよう心掛けています。患者さん手持ちの残薬は何本か、自己注射に前向きに取り組めているかどうかなどの情報を、電子カルテ内の看護記録テンプレートに書き込んで申し送りをしています。

勝田先生:テリボンオートインジェクターが「1回1本の使い切り」である点は、外来の診療でも利点になっています。というのは、患者さんが家でちゃんと自己注射できているかが把握しやすいからです。飲み薬の場合、ちゃんと飲めているのかどうかが外来の医師には本当のところは分かりません。テリボンオートインジェクターの場合、患者さんが医療廃棄物として使用後の注射器を診察日に持ってきてくださるので、その本数を数えれば家でちゃんと打てているかが分かるのです。

「AK-Pad」について説明する病棟看護師の松井香緒里 氏(左)と、外来看護師の仲村礼子 氏(右)

「Re-Bone倶楽部」がシームレスな患者サポートで役立っている

勝田先生:当院は主に急性期医療を担っており、症状が落ち着いた患者さんの診療は、ご自宅近隣の医療機関に引き継ぐことが多いです。テリボンオートインジェクターは2年間にわたって継続していただく薬なので、3~6カ月後には処方元が変わることになります。処方を引き継ぐ際、患者さんが自己注射をやめてしまわないか私たちは心配になりますが、旭化成ファーマが運営する「Re-Bone倶楽部」がシームレスな患者サポートをしてくれて助かっています。

石部氏:「Re-Bone倶楽部」は、テリボンオートインジェクターを使用中の患者さんに向けたプログラムで、自己注射の継続をサポートするコンテンツやサービスを提供しています。自己注射の日を忘れないためのカレンダー、骨粗鬆症予防にお勧めのレシピ集、無料の電話相談、テリボンオートインジェクターの治療を完了した方への表彰状などがあります。当院でテリボンオートインジェクターを導入した患者さんのうち、これまでに約70人が「Re-Bone倶楽部」に登録しています。「骨粗鬆症の予防、治療について学べる」「薬の働きや効果について説明してくれて安心」「定期的に送られてくる骨に良いレシピの料理本が楽しみだ」といった声を聞いています。

今後の抱負:運動器ケアの「総合デパート」目指す

勝田先生:この地域の高齢者の骨折をゼロにしたい──。それが高齢者医療についての私の目標です。「ゼロ」が無理なのは分かっていますが、少しでも実現に近づけるよう、2次骨折予防のみならず1次骨折予防のための運動器ケアも徹底的に追求していきたいと考えています。薬、手術、リハビリテーションだけでなく、サプリメント、装具、靴、枕、保険適応外の運動指導なども組み合わせて、「運動器ケア しまだ病院に行けば運動器のことは何でも解決してくれる」と地域の方々に頼っていただけるよう、いわば運動器ケアの総合デパートのような施設を目指していきます。勝田紘史 病院長(運動器ケア しまだ病院提供)

 テリボン皮下注28.2μgオートインジェクター製品情報
https://akp-pharma-digital.com/products/list/155

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