国内第III相試験

本剤は、海外臨床試験データを日本人に外挿することが可能であると判断され、国内第Ⅲ相試験及び海外第Ⅲ相試験を含む臨床データパッケージに基づいて承認されました。このため、一部承認外の菌種による真菌症の成績が含まれますが、承認時評価資料のため掲載します。

日本人深在性真菌症患者を対象とした臨床試験

(AK1820-301試験)1), 2)

結果

(1)投与開始から投与終了後35日目までに有害事象を発現した患者の割合(安全性解析対象集団)【主要評価項目】

●コホートA
慢性肺アスペルギルス症における有害事象の発現頻度は、クレセンバ群90.4%(47/52例) 、ボリコナゾール群92.6%(25/27例)であった。
侵襲性アスペルギルス症における有害事象の発現頻度は、クレセンバ群3/3例、ボリコナゾール群1/1例であった。

●コホートB
ムーコル症における有害事象の発現頻度は3/3例、クリプトコックス症における有害事象の発現頻度は90.0%(9/10例)であった。

(2)42日目、84日目及びEOTの総合効果総合効果(DRC判定)(mITT集団)【副次評価項目】

有効性の判定基準については下部に記載

●コホートA
1)慢性肺アスペルギルス症

■ 42日目、84日目及び投与終了時の総合効果(DRC判定)

総合効果の有効率は、クレセンバ群及びボリコナゾール群でそれぞれ、42日目では78.8%及び63.0%、84日目では84.6%及び74.1%、投与終了時では82.7%及び77.8%であった。

このうち、慢性進⾏性肺アスペルギルス症及び単純性肺アスペルギローマの総合効果は以下のとおりであった。

2)侵襲性アスペルギルス症

■ 42日目、84日目及び投与終了時の総合効果(DRC判定)

総合効果は、42日目及び投与終了時でクレセンバ群1/3例、ボリコナゾール群1/1例が有効と判定された。クレセンバ群及びボリコナゾール群で有効と判定された患者は、それぞれ62日目、37日目に投与中止した。

●コホートB
1)ムーコル症

■ 42日目、84日目及び投与終了時の総合効果(DRC判定)

総合効果は、42日目、84日目及び投与終了時のいずれの時点においても、クレセンバ群1/3例が有効と判定された。

2)クリプトコックス症
クリプトコックス症10例は、全例が肺クリプトコックス症であった。

■ 42日目、84日目及び投与終了時の総合効果(DRC判定)

総合効果の有効率は、42日目、84日目及び投与終了時でいずれの時点においても90.0%であった。

安全性(安全性解析対象集団)

●コホートA
副作用は、クレセンバ群60.0%(36/60例)、ボリコナゾール群80.0%(24/30例)に認められた。主な副作用は、クレセンバ群では肝機能検査値上昇5例(8.3%)、肝機能異常、ほてり各4例(6.7%)、悪心3例(5.0%)であり、ボリコナゾール群では肝機能異常、羞明各7例(23.3%)、視力障害4例(13.3%)、肝機能検査値上昇、色覚異常各3例(10.0%)、肝障害、悪⼼、嘔吐、浮動性めまい、霧視、幻視各2例(6.7%)であった。
重篤な副作用は、クレセンバ群4例、ボリコナゾール群1例に認められ、その内訳はクレセンバ群では胆嚢炎、筋力低下、抗利尿ホルモン不適合分泌、低ナトリウム血症各1例、ボリコナゾール群では薬物性肝障害、横紋筋融解症各1例であった。
投与中止に至った副作用は、クレセンバ群8例、ボリコナゾール群4例に認められ、その内訳は、クレセンバ群では肝機能異常2例、高カリウム血症、低ナトリウム血症、感覚鈍麻、肝機能検査値上昇、悪心、注射部位蕁麻疹、腎機能障害、呼吸困難、口腔咽頭不快感、冷汗各1例であり、ボリコナゾール群では肝機能異常、薬物性肝障害、多発ニューロパチー、視力障害、横紋筋融解症各1例であった。
本試験のコホートAにおいて、死亡に至った副作用は両群で認められなかった。

●コホートA/B併合(クレセンバ群)
副作用は60.3%(44/73例)に認められ、主な副作用は、肝機能検査値上昇6例(8.2%)、肝機能異常、悪⼼各5例(6.8%)、ほてり4例(5.5%)であった。
重篤な副作⽤は5例に認められ、コホートAの事象に加え、死亡1例が認められた。
投与中⽌に⾄った副作⽤は9例に認められ、コホートAの事象に加え、⼼電図異常1例が認められた。
本試験のコホートA/B併合において、死亡に至った副作用が1例(コホートB)に認められ、発現事象は「死亡」であった。当該事象は突然死であり、剖検未実施で合理的に説明し得る死因の特定が困難であったため、治験薬との因果関係は否定されなかった。

試験概要

目的 日本人深在性真菌症患者を対象に、クレセンバを静脈内投与又は経口投与した場合の安全性及び有効性を検討する。
試験デザイン
コホートA:多施設共同、無作為化、非盲検、実薬対照試験
コホートB:多施設共同、非盲検、非対照試験
対象
コホートA:慢性肺アスペルギルス症(慢性進行性肺アスペルギルス症、単純性肺アスペルギローマ)及び侵襲性アスペルギルス症患者90例(慢性肺アスペルギルス症:クレセンバ群52例、ボリコナゾール群27例、侵襲性アスペルギルス症:クレセンバ群3例、ボリコナゾール群1例、No deep mycosis(DRCが深在性真菌症の診断基準に合致しない、または可能性例と判定した症例):クレセンバ群5例、ボリコナゾール群2例)
コホートB:ムーコル症及びクリプトコックス症(肺クリプトコックス症、播種性クリプトコックス症、クリプトコックス脳髄膜炎)患者13例(ムーコル症3例、クリプトコックス症10例;いずれもクレセンバ群)
【主な選択基準】
下記と診断された20歳以上の患者
  • 慢性肺アスペルギルス症:「確定例」又は「臨床診断例」
  • 侵襲性アスペルギルス症:「確定例」、「臨床診断例」又は「可能性例」(「可能性例」については、治験薬投与開始後7日以内に「確定例」又は「臨床診断例」の基準を満たすこととした。)
  • ムーコル症:「確定例」
  • クリプトコックス症:「確定例」又は「臨床診断例」
【主な除外基準】
  • アゾール系抗真菌薬又は治験薬の成分に過敏症を有する患者
  • QT/QTc延長のリスクが高い、トルサード・ド・ポアントのリスク因子を有する、又はQT/QTc間隔を延長させる薬剤を使用している患者
  • QT短縮症候群の既往を有する患者
  • 登録時に肝機能障害のある患者
  • 登録時に中等度から重度の腎機能障害を有する患者(コホートAで治験薬を注射剤で開始する患者のみ適用)
  • 治験薬投与前5日以内にエファビレンツ、リトナビル、リファンピシン、リファブチン、イバブラジン塩酸塩、麦角アルカロイド、長時間作用型バルビツール酸塩、カルバマゼピン、ピモジド*#、キニジン、トリアゾラム、又はセイヨウオトギリソウ等、国内外の添付文書で併用禁忌とされる薬剤の投与を受けた患者(*はコホートAのみ適用)
  • ボリコナゾールが無効又は不耐、又は治験薬投与前14日以内にボリコナゾールの投与を受けた患者(コホートAのみ適用)
  • ボリコナゾール以外の全身性抗真菌薬投与中の患者で、治験薬投与開始までにこれら薬剤の投与を中止できない、又はこれら薬剤により深在性真菌症の症状が改善傾向にある患者(改善又は改善傾向にない場合は、これら薬剤から治験薬への切り替えは可能)
  • クリプトコックス脳髄膜炎が強く疑われる患者(ただし、アムホテリシンBリポソーム製剤に不耐の患者は登録可能) 等

#:国内未承認

投与方法
治験薬を最大84日間投与した。
  • コホートA:疾患名(慢性肺アスペルギルス症、侵襲性アスペルギルス症)、体重(40kg以下、40kg超)を層別因子として、クレセンバ群又はボリコナゾール群に2:1で無作為に割り付けた。
  • コホートB:全例をクレセンバ群に割り付けた。
治験薬は、静脈内投与又は経口投与で開始し、切り替えは静脈内投与から経口投与のみ可能とした。登録時の診断分類、投与開始42日目、84日目及び投与終了時の治療効果をデータレビュー委員会(DRC)が評価した(コホートAは盲検下で評価)。治験薬投与終了後28日間を追跡調査期とし、追跡調査期終了までのすべての有害事象を調査した。
治験薬の投与方法
  • クレセンバ群:負荷投与として注射剤又はカプセル剤200mgを約8時間おきに6回投与し、維持投与として負荷投与終了12~24時間後より注射剤又はカプセル剤を1日1回200mg投与した。注射剤は、最低1時間かけて点滴静脈内投与した。
  • ボリコナゾール群:負荷投与として注射剤6mg/kg又は錠剤300mgを約12時間おきに2回投与し、維持投与として負荷投与終了12~24時間後より注射剤4mg/kg又は錠剤200mgを1日2回投与した。添付文書の記載事項を参考に投与量を調整し、必要に応じて投与期間中は血漿中濃度モニタリングを行うこととした。
評価項目
[主要評価項目]
  • 投与開始から投与終了後35日目までに有害事象を発現した患者の割合
[副次評価項目]
  • 42日目、84日目及び投与終了時の総合効果(DRC判定) 等
[安全性評価項目]
  • 有害事象 等
解析計画
解析対象集団
  • intent-to-treat(ITT)集団/安全性解析対象集団:治験薬を1回以上投与された患者集団
  • modified ITT(mITT)集団:ITT集団のうちDRC判定により深在性真菌症の「確定例」又は「臨床診断例」と判定された患者集団

mITT集団を主たる有効性解析対象集団とした。

解析方法
[主要評価項目]
  • 安全性解析対象集団を対象に、コホートごと、DRCによる診断名ごと、投与群ごとに投与開始から投与終了後35日目までに有害事象を発現した患者の割合を集計した。
[副次評価項目]
  • mITT集団を対象に、DRC判定による各評価時点の総合効果を、疾患ごと及び投与群ごとに算出した。

※ DRC判定による総合効果の各評価時点で欠測が生じた場合は無効、全死因死亡率の各評価時点での生存状況が不明であった場合は死亡と扱った。

  • DRC:治験依頼者及び治験責任医師とは独立した感染症専門医及び放射線専門医から構成されるデータレビュー委員会。

効果判定基準

1)承認時評価資料, 社内資料:日本人深在性真菌症を対象とした国内第Ⅲ相試験(AK1820-301試験)
2) Kohno S et al. J Infect Chemother. 2022; S1341-321X(22)00293-8. doi: 10.1016/j.jiac.2022.10.010.
[Epub ahead of print] 本試験は旭化成ファーマ株式会社の支援により実施された。

  • 4. 効能・効果
  • 下記の真菌症の治療
  • 〇アスペルギルス症(侵襲性アスペルギルス症、慢性進行性肺アスペルギルス症、単純性肺アスペルギローマ)、〇ムーコル症、〇クリプトコックス症(肺クリプトコックス症、播種性クリプトコックス症(クリプトコックス脳髄膜炎を含む))
  • 7. 用法・用量に関連する注意
  • 7.1 カプセル剤と注射剤は医師の判断で切り替えて使用することができる。
  • 7.2 投与期間は基礎疾患の状態、免疫抑制からの回復及び臨床効果に基づき設定すること。
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