海外第III相試験

本剤は、海外臨床試験データを日本人に外挿することが可能であると判断され、国内第Ⅲ相試験及び海外第Ⅲ相試験を含む臨床データパッケージに基づいて承認されました。このため、一部承認外の菌種による真菌症の成績が含まれますが、承認時評価資料のため掲載します。

VITAL試験

ー 腎機能障害を有する侵襲性アスペルギルス症患者、もしくは稀な侵襲性真菌症(ムーコル症、クリプトコックス症を含む)患者を対象とした臨床試験ー
(9766-CL-0103試験)(国際共同試験、海外データ)1-3)

結果

(1)侵襲性アスペルギルス症(mITT-Aspergillus 集団)
■ 42日目の総合効果(DRC判定)【主要評価項目】
84日目及び投与終了時の総合効果(DRC判定)【副次評価項目】<全体、サブグループ解析>

42日目の総合効果の有効率は29.2%であった。腎機能障害の有無別a)に評価すると、腎機能障害ありの患者では25.0%、腎機能障害なしの患者では2/4例が有効と判定された。
84日目及び投与終了時の総合効果の有効率は、それぞれ29.2%及び34.8%であった。腎機能障害ありの患者及び腎機能障害なしの患者ではそれぞれ、84日目では30.0%及び1/4例、投与終了時では30.0%及び2/3例が有効と判定された。

有効性の判定基準については下部に記載

  • a )腎機能障害はeGFR<60mL/min/1.73m2と定義した。
  • b )クレセンバ投与を継続中の1例を除外した。
■ 42日目及び84日目までの全死因死亡率【副次評価項目】<全体、サブグループ解析>

42日目までの全死因死亡率は12.5%であり、死亡した全例が腎機能障害を有していた。84日目までの全死因死亡率は25.0%であり、死亡例6例の内訳は、腎機能障害ありの患者が5例、腎機能障害なしの患者が1例であった。

(2)ムーコル症(mITT-Mucorales 集団)
■ 42日目の総合効果(DRC判定)【主要評価項目】/投与終了時の総合効果(DRC判定)【副次評価項目】<全体、サブグループ解析>

主要評価項⽬は、DRC判定による42⽇⽬の総合効果としていたが、各患者の状態や臨床経過により投与期間が様々であったことから、評価時点は投与終了時を主要な時点として評価した。
投与終了時の総合効果の有効率は31.4%であり、完全解消が5例、部分改善が6例であった。治療状況別では、⼀次治療は31.6%、他剤無効は36.4%、他剤不耐容は1/5例が有効と判定された。

有効性の判定基準については下部に記載

  • a )クレセンバ投与を継続中の2例を除外した。
■ 180日目までの全死因死亡率【副次評価項目】

Kaplan-Meier法で推定した180日目までの全死因死亡率は47.1%であった。

(3)クリプトコックス症
■ クリプトコックス症患者の概要

クリプトコックス症に対する解析は計画されていなかったが、本試験の臨床成績と国内第Ⅲ相試験のデータに基づき本剤のクリプトコックス症に対する治療効果が評価されたため掲載する。なお、海外ではクリプトコックス症に対する適応症は取得していない。
DRC判定による投与終了時の総合効果は6/9例が有効と判定された。治療状況別では、⼀次治療は4/6例、救済治療(他剤無効⼜は他剤不耐容)は2/3例が有効と判定された。疾患別(病変部位別)では、肺クリプトコックス症5/6例、播種性クリプトコックス症(クリプトコックス脳髄膜炎を含む)4/6例が有効と判定された(3例は両病変を有していた)。

  • a )病変が肺にある場合は肺クリプトコックス症、中枢神経系(CNS)にある場合はクリプトコックス脳髄膜炎として検討した。
  • b )11日間のアムホテリシンB投与に不耐容
  • c )16日間のアムホテリシンB及びフルコナゾールの併用投与が無効
  • d )17日間のアムホテリシンB及びフルコナゾールの併用投与に不耐容
  • e )7日目に死亡
  • f )脳脊髄液で確認
  • NOS:Not otherwise specified

安全性(安全性解析対象集団)

副作用は41.1%(60/146例)に認められた。主な副作用は、悪心11例(7.5%)、嘔吐9例(6.2%)、下痢、γ-GTP増加各7例(4.8%)であった。
重篤な副作用は13例に認められ、その内訳は、サイトメガロウイルス性小腸炎、真菌感染、ウイルス性胃腸炎、ムコール症、敗血症性ショック、皮下組織膿瘍、食道炎、嘔吐、急性肝不全、肝障害、腎不全、急性腎不全、網膜出血、硝子体出血、移植片対宿主病、筋骨格系胸痛、痙攣、錯乱状態、幻覚、嚥下性肺炎各1例であった。
投与中止に至った副作用は7例に認められた。その内訳は、真菌感染、敗血症性ショック、ALT増加、血中ALP増加、血中乳酸脱水素酵素増加、γ-GTP増加、肝酵素上昇、嘔吐、急性肝不全、錯乱状態、幻覚、急性腎不全各1例であった。
本試験において、死亡に至った副作用の発現は1例に認められた。その事象は敗血症性ショックであった。

試験概要

目的 腎機能障害を有する侵襲性アスペルギルス症患者、もしくは稀な糸状菌、酵母又は二形性真菌を起因菌a)とする侵襲性真菌症患者を対象に、クレセンバの有効性及び安全性を評価する。
試験デザイン 国際共同、非盲検、非対照試験
対象
腎機能障害を有する侵襲性アスペルギルス症、もしくは稀な糸状菌、酵母又は二形性真菌を起因菌とする侵襲性真菌症(ムーコル症、クリプトコックス症含む)患者146例
【主な選択基準】
  • アスペルギルス種、稀な糸状菌、酵母又はその他の二形性真菌(Aspergillus fumigatus 又はカンジダ種以外の病原真菌)を起因菌とする侵襲性真菌症の「確定例」、「臨床診断例」又は「可能性例」と診断された18歳以上の患者(「可能性例」は、治験薬投与開始後7日以内に「確定例」又は「臨床診断例」の基準を満たすこととした。)
  • クレアチニン・クリアランス(CLcr)が50mL/min未満の患者(侵襲性アスペルギルス症の患者のみ適用)
【主な除外基準】
  • アゾール系抗真菌薬又は治療薬の成分に対するアレルギー、過敏症又は何らかの重篤な反応の既往がある患者
  • QT延長のリスクが高い、トルサード・ド・ポアントのリスク因子を有する、又はQT間隔を延長することが確認されている薬剤を併用している患者
  • 肝機能障害が確認されている患者
  • 体重が40kg未満の患者
  • 治験薬の初回投与前5日以内にアステミゾール*1、シサプリド*1、リファンピン/リファンピシン、リファブチン、麦角アルカロイド類、長時間作用型バルビツール酸誘導体、リトナビル、エファビレンツ、カルバマゼピン、ピモジド*1、キニジン、ネオスチグミン、テルフェナジン*1、ケトコナゾール*2、バルプロ酸又はセント・ジョーンズ・ワートを併用した患者 等

*1:国内未承認  *2:注射剤及び経口剤は国内未承認

投与方法
全例をクレセンバ群に割り付け、治験薬を最大180日間投与したb)。静脈内投与又は経口投与で開始し、必要に応じて随時切り替え可能とした。登録時の診断分類、有効性、死因及び治療状況(一次治療、他剤無効、他剤不耐容)をDRCが評価した。治験薬投与終了後28日間を追跡調査期とし、追跡調査期終了までのすべての有害事象を調査した。
投与方法
負荷投与として注射剤又はカプセル剤200mgを約8時間おきに6回投与した。維持投与として負荷投与終了12~24時間後より注射剤又はカプセル剤200mgを1日1回投与した。注射剤は、1時間以上かけて点滴静脈内投与した。
評価項目
[主要評価項目]
  • 42日目の総合効果(DRC判定)
[副次評価項目]
  • 84日目及び投与終了時の総合効果(DRC判定)
  • 42日目、84日目及び180日目までの全死因死亡率
[安全性評価項目]
  • 有害事象 等
解析計画
解析対象集団
  • ITT集団/安全性解析対象集団:治験薬を1回以上投与された患者集団
  • mITT集団:ITT集団のうち、DRC判定により侵襲性真菌症の「確定例」又は「臨床診断例」とされた患者集団
  • mITT-Aspergillus 集団:mITT集団のうち、アスペルギルスのみを起因菌とする患者集団
  • mITT-Mucorales 集団:mITT集団のうち、ムーコルのみを起因菌とする患者集団
  • ITT集団及びmITT集団を主たる有効性解析集団とした。
解析方法
[主要評価項目]
  • mITT-Aspergillus 集団、mITT-Mucorales 集団を対象に、DRC判定による42日目の総合効果の有効率を算出した。サブグループ解析としてmITT-Aspergillus 集団では腎機能障害の有無別(eGFR<60mL/min/1.73m2:腎機能障害あり、eGFR≧60mL/min/1.73m2:腎機能障害なし)、mITT-Mucorales 集団では治療状況別(一次治療、他剤無効、他剤不耐容)に有効率を算出した。
[副次評価項目]
  • mITT-Aspergillus 集団、mITT-Mucorales 集団を対象に、DRC判定による84日目及び投与終了時の総合効果の有効率を算出した。
  • mITT-Aspergillus 集団、mITT-Mucorales 集団を対象に、各評価時点の全死因死亡率を算出した。また、Kaplan-Meier推定法に基づく180日目までの累積生存率を算出した。
  • サブグループ解析は主要評価項目と同様に、mITT-Aspergillus 集団では腎機能障害の有無別、mITT-Mucorales 集団では治療状況別に行った。

※ DRC判定による総合効果の各評価時点で欠測が生じた場合は無効、全死因死亡率の各評価時点で生存状況が不明の場合は死亡と扱った。生存時間解析で追跡不能となった場合は最終評価日を打ち切りとした。なお、データカットオフ時点で治験薬投与を継続中の患者は、DRC評価がないため投与終了時の解析に含めなかった。

  • a )同定された菌のうちクレセンバの適応菌種でないものは、糸状菌ではFusarium(4例)、Exophiala(2例)、Cladosporium(2例)、Scopulariopsis(2例)、Acremonium(1例)、Alternaria(1例)、Curvularia(1例)、Exserohilum(1例)、Paecilomyces(1例)、Pseudallescheria(1例)、Scedosporium(1例)、二形性真菌ではParacoccidiodes(10例)、Coccidiodides(9例)、Histoplasma(7例)、Blastomyces(3例)、酵母ではTrichosporon(2例)であった。
  • b )投与期間は、試験開始当初84日(組み入れ:6例)であったが、その後の治験実施計画書の改訂により、最長投与期間を180日とした。さらに、米国等の一部地域では、治験責任医師の要請及び治験依頼者の承認に基づいて、180日を超えて投与を延長することが認められた。
  • DRC:治験依頼者及び治験責任医師とは独立した感染症専門医及び放射線専門医から構成されるデータレビュー委員会。

効果判定基準

1)承認時評価資料, 社内資料:海外第Ⅲ相試験(9766-CL-0103試験)
2)Marty FM et al. Lancet Infect Dis. 2016; 16(7): 828-837. 本試験はバジリア社の支援により実施された。
3)Thompson GR 3rd et al. Clin Infect Dis. 2016; 63(3): 356-362. 本試験はバジリア社の支援により実施された。

  • 4. 効能・効果
  • 下記の真菌症の治療
  • 〇アスペルギルス症(侵襲性アスペルギルス症、慢性進行性肺アスペルギルス症、単純性肺アスペルギローマ)、〇ムーコル症、〇クリプトコックス症(肺クリプトコックス症、播種性クリプトコックス症(クリプトコックス脳髄膜炎を含む)
  • 7. 用法・用量に関連する注意
  • 7.1 カプセル剤と注射剤は医師の判断で切り替えて使用することができる。
  • 7.2 投与期間は基礎疾患の状態、免疫抑制からの回復及び臨床効果に基づき設定すること。
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