海外文献よりSLEに関する最新のエビデンスをお届けします
文献選定・監修
慶應義塾大学医学部 名誉教授 竹内 勤 先生
本ウェブサイトでは、全身性エリテマトーデス(SLE)に関する興味深い論文を紹介しているが、今回より論文数を増やし、毎回4報のサマリーをお届けすることとなった。
今回紹介する1報目は、フィンランドにおけるSLE患者の死亡率を一般集団と比較した論文である。平均余命はSLEの罹患によって短縮し、その要因として心血管疾患(CVD)が示唆されているものの、大規模かつ長期にわたる研究は少ない。本論文では、SLE予後の経時的変遷に関する貴重なデータが提示されている。SLE患者における死亡率増加と診断時の合併症との強い関連が示されており、日常診療では合併症の存在に十分に留意する必要があるといえよう。
2報目は、ダイナミック造影 MRIを用いて定量化した血液脳関門透過性と脳体積や認知機能との関連を検討した論文である。血液脳関門漏出がSLEにおける認知機能障害に関連するという新規性の高い研究であり、新たな治療標的の可能性が示唆される。
3報目は、分子経路解析によるSLEの層別化を目指した意欲的研究である。SLEのプレシジョン・メディシンに向けて患者の層別化は必須であり、その情報に基づいて創薬研究の加速がもたらされると思われる。
4報目は、自己免疫疾患の原因のひとつとされるⅠ型インターフェロンの産生亢進に関する研究である。SLEにおけるⅠ型インターフェロンの主な産生細胞として形質細胞様樹状細胞が注目されてきたが、SLEにおいて同細胞の機能は障害されており、Ⅰ型インターフェロンが非造血細胞性由来であることが示されている。この2つがヒトの自己免疫を特徴づけていると考察しており、ウイルス感染症と対比して解釈すると興味深い。
Summary based on article by Elfving P*, et al. Rheumatology (Oxford). 2021 Jan 6: keaa917. [Online ahead of print]
* Department of Medicine, Kuopio University Hospital, Kuopio, Finland
Summary based on article by Kamintsky L*, et al. Ann Rheum Dis. 2020; 79(12): 1580-1587.
* Department of Medical Neuroscience, Dalhousie University, Halifax, Nova Scotia, Canada.
Summary based on article by Sandling JK*, et al. Ann Rheum Dis 2021; 80(1): 109-117.
*Department of Medical Sciences, Rheumatology, Uppsala University, Uppsala, Sweden
Summary based on article by Psarras A*, et al. Nat Commun 2020; 11(1): 6149.
*Leeds Institute of Rheumatic and Musculoskeletal Medicine, University of Leeds, Leeds, UK/National Institute for Health Research (NIHR), Leeds Biomedical Research Centre, Leeds Teaching Hospitals NHS Trust, Leeds, UK/Division of Rheumatology, Beth Israel Deaconess Medical Center, Harvard Medical School, Boston, MA, USA.
注:本文献要旨集は、医療関係者にとって有益な情報を提供するための資材です。2020年9月~2021年1月の間に発表された全身性エリテマトーデスに関連する医学論文の中から監修ドクターが客観的に1報選定し、Springer Healthcareの医学ライターが作成したサマリーです。サノフィ株式会社は論文選定、原稿作成には関与していません。