Lupus Research Outlook Today

Vol.15（INDEX）

全身性エリテマトーデス（SLE）患者における精神神経（NP）症状は、ループス腎炎と並んで重篤な症状である。そのNP症状は多彩であり、SLEに起因するものが約30～50%を占めるとされている。今回紹介した1報目は、SLEにおけるNP症状の臨床的特徴に関する大規模かつ長期的な研究であり、NP SLEに関する最新情報が含まれている。
2報目は、SLEと未分化結合組織病（Undifferentiated Connective Tissue Disease：UCTD）における妊娠予後を比較した研究である。UCTDは、定義によって若干の差はあるものの、概ね、結合組織病の症状を呈し抗核抗体陽性で、他の結合組織病の診断基準を満たさない疾患である。多くのUCTDはSLEに比べて経過が良好であるが、妊娠予後に関する情報は少なく、貴重な報告といえよう。
3報目は、SLEの病態における制御性T（Treg）細胞の機能不全とそれに対するセレクチンの関与に焦点を当てた研究である。SLEの病態形成に免疫寛容の破綻がかかわっており、Treg細胞は免疫寛容に最も重要な役割を果たしている細胞である。Treg細胞の免疫抑制機能に対してセレクチンが及ぼす影響について、様々な分子生物学的手法を用いて丁寧に検討している。SLEマウスモデルを用いた実験では、P-セレクチンがSLEの新規の治療標的となる可能性を示唆する結果が得られており、大変興味深い。
最後に、SLE発症の性差に関する最新の研究を取り上げた。SLE患者の85%は女性であり、その性差には染色体不活性化の関与が考えられている。X染色体不活性化のエピジェネティクス調節機構の異常とSLEの関連について、シングルセルおよびバルクセルのRNAシーケンスデータセットを用いて検討している。発症の性差のみならず、B細胞の異常な抗体産生のメカニズムに関する今後の研究のためにも有用な知見と思われる。