海外文献よりSLEに関する最新のエビデンスをお届けします
文献選定・監修
慶應義塾大学医学部 名誉教授 竹内 勤 先生
近年、全身性エリテマトーデス(SLE)の早期診断、早期治療が可能となり、本症の予後は著しく改善した感がある。では、本当に以前と比べてSLE患者の死亡率は改善したのであろうか。また、SLE患者の死因は変化しているのであろうか。今回紹介する1報目は、SLE患者の生命予後とその原因に関する最近の傾向について、カナダの医療データベースを用いて調査した報告である。新薬の登場などにもかかわらず、死亡率は改善していないという意外な結果が示されており、合併症の抑制なども含めた、より包括的な管理を進める必要があるだろう。
2報目は、SLEにおける一塩基多型と喫煙の相互作用が心筋梗塞と腎炎リスクに関連するという報告である。SLE患者、特にSTAT4リスクアレルを保有する患者における合併症の予防に、禁煙が重要であることが示唆されており、興味深い結果である。
3報目は、免疫性炎症疾患横断的に遺伝子多型が遺伝子発現に与える影響をカタログ化する大規模なデータベースを作成したという報告である。このデータベースはWeb上で公開されており、今後の研究にも大いに役立つものと期待される。
4報目は、脱核している血小板でもミトコンドリアからDNAが放出されれば自己抗体を誘導するかもしれないという発想から丁寧な実験を行い、血小板がSLEにおけるミトコンドリア抗原の重要な供給源であることを示した独創的な研究である。SLE治療の新たな標的を提供する研究結果であり、今後の展開が楽しみである。
Summary based on article by Moghaddam B*, et al. Rheumatology 2021 Apr 19; keab362.[Online ahead of print]
*Division of Rheumatology, Department of Medicine, Icahn School of Medicine at Mount Sinai, New York, NY, USA
Summary based on article by Reid S*, et al. Ann Rheum Dis 2021; 80(9): 1183-1189.
*Department of Medical Sciences, Rheumatology and Science for Life Laboratory, Uppsala University, Uppsala, Sweden
Summary based on article by Ota M*, et al. Cell 2021: 184(11): 3006-3021.
*Department of Allergy and Rheumatology & Department of Functional Genomics and Immunological Diseases, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo, Tokyo, Japan
Summary based on article by Melki I*, et al. Sci Transl Med 2021; 13(581): eaav5928.
*Centre de Recherche du Centre Hospitalier Universitaire de Québec/Faculté de Médecine and Centre de Recherche ARThrite, Université Laval, Québec, QC G1V 4G2, Canada
注:本文献要旨集は、医療関係者にとって有益な情報を提供するための資材です。2021年2月~4月の間に発表された全身性エリテマトーデスに関連する医学論文の中から監修ドクターが客観的に1報選定し、Springer Healthcareの医学ライターが作成したサマリーです。サノフィ株式会社は論文選定、原稿作成には関与していません。