カルシトニンの鎮痛作用のメカニズムを図解する
骨粗鬆症患者には、椎体骨折が原因と考えられる腰背部痛が頻発する。その疼痛発生のメカニズムについて、「椎体骨折による急性の疼痛」と「脊柱変形による慢性の疼痛」に分け、詳しく解説する。
骨粗鬆症における骨の脆弱性の原因である「骨ホメオスタシスの破綻」。骨組織では、どのようなメカニズムで骨代謝が行われているのか。代表的な骨粗鬆症治療薬の作用機序とともに分子レベルで解説する。
骨折治癒では、血腫形成、壊死組織除去、細胞増殖、基質合成、組織の分化が順序よく進行する。これらの過程には、PDGF、VEGF、FGF、TGF-β、BMP-2、-4、-7など多数の成長因子が関与している。
骨基質内に存在する骨細胞は、骨細管を介した骨細胞・骨細管系を形成することで、細胞間コミュニケーションを行う。規則的な幾何学構築を示す骨細管系は、成熟した緻密骨によく発達しており、骨代謝調節を行う機能的ネットワークと考えられる
骨形成促進作用を有する薬剤として副甲状腺ホルモン(PTH)が挙げられ、欧米に続いて本邦においても骨粗鬆症治療薬として認可されている。そして、骨形成シグナルの基礎研究の急速な進展とともに、PTHの骨形成促進機序も明らかとなってきつつある。本稿では、PTHの骨形成メカニズムについて概説する。
骨微細構造は、骨の強度を維持するようにデザインされている。皮質骨は多数の層板構造、海綿骨は骨梁構造からなり、皮質骨では多孔化・菲薄化、海綿骨では骨梁の断裂・消失など、構造特性の劣化により骨強度が低下する。
骨のリモデリングには、ランダムに起こるものと、マイクロクラックなどの骨微細損傷を修復するためのリモデリングがある。骨の強度、とりわけたび重なる負荷に対する強度は、この微細損傷修復リモデリングにより維持されている。
高度な骨粗鬆症症例での椎体骨折では、脆弱化した骨梁が大量に破砕されやすく、骨折周囲に新生骨梁の架橋構造が構築されにくい。そのため、強固な骨癒合が完成せず、骨折椎体内にintravertebral cleftが形成され、脊椎の不安定性のため著しい痛みや神経圧迫を惹起する症例がある。
骨粗鬆症における骨脆弱化の機序には、骨密度の低下とは別に骨質の低下が関与している。骨質の低下には、コラーゲン分子間をつなぎ止める架橋の異常―悪玉架橋の増加が影響する。現在、この悪玉架橋を骨質マーカーとした骨折リスク評価への試みが進められている。
骨は、その量と構造を維持するうえで、生理的なメカニカルストレスが必要不可欠である。不動・非荷重は、骨形成を急速に低下させるが、その分子メカニズムが徐々に解明されてきた。副甲状腺ホルモンや抗スクレロスチン抗体による治療の有効性も確認されてきた。
力学的負荷とPTHは、骨細胞のΔFosB発現とSmad1リン酸化を促進し、IL-11発現を促進する。IL-11はスクレロスチン、Dkkの発現を抑制し、Wnt/βカテニンシグナルの促進により骨芽細胞分化が促進され骨形成が高まる。