11.メカニカルストレスの欠如と骨形成低下

監修:産業医科大学整形外科准教授 酒井昭典先生
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骨は、その量と構造を維持するうえで、生理的なメカニカルストレスが必要不可欠である。不動・非荷重は、骨形成を急速に低下させるが、その分子メカニズムが徐々に解明されてきた。副甲状腺ホルモンや抗スクレロスチン抗体による治療の有効性も確認されてきた。

骨芽細胞におけるシグナル伝達

メカニカルストレスに対して初期に反応する重要な分子として、細胞外マトリックスに存在するPECAM-1(platelet endothelial cell adhesion molecule-1)とインテグリンが挙げられる。PECAM-1はαvβ3インテグリンとヘテロフィリックな相互作用によりシグナルを伝達する。αvβ3インテグリンとβ1インテグリンを介してIGF-1(insulin-like growth factor-1)受容体にシグナルを送り、細胞内でG蛋白とリンクし、Ras、Raf、MEK、ERK(extracellular signal-regulated kinase)、JNK(c-Jun NH2-terminal kinase)、p38など一連のMAPKs(mitogen-activated protein kinases)のリン酸化を誘導し、核内にシグナルを伝え、early growth response-1(Erg-1)、c-fos、Cox-2(cy-clooxygenase-2)、NO(nitric oxide)、osterix、osteocalcin、osteopontinなどの骨形成関連遺伝子の発現を促進する。メカニカルストレスが欠如すると、PECAM-1、インテグリンから骨形成関連遺伝子に至る一連のシグナルが低下する。

スクレロスチンとWntシグナル

不動・非荷重により骨細胞におけるスクレロスチンの発現は亢進し、骨芽細胞におけるWntの発現は低下する。LRP5/6(low-density lipoprotein receptor-related protein 5 and 6)は、Wntがその受容体Frizzledと結合するための共受容体である。スクレロスチンはLRP5/6と結合し、WntとLRP5/6の結合を阻害することにより、Dsh(Dishevelled)の放出を抑制する。Dshの抑制は、GSK-3β(glycogen synthase kinase-3β)、Axin、APC(adenosis polyposis coli)からなる複合体の形成を促進する。β-カテニンはGSK-3βによりリン酸化され、リン酸化されたβ-カテニンはユビキチン化を受け、最終的にプロテアソーム経路により分解される。その結果、β-カテニンの核内移行は減少し、骨芽細胞分化は抑制され、骨形成は低下する。このように、スクレロスチンはWntシグナルを抑制的に制御している。Dkk(Dickkopf)とsFRP(secreted Frizzled-related proteins)もWntシグナルに拮抗する。スクレロスチン遺伝子欠損マウスを尾部懸垂により非荷重にしても、骨形成低下による骨量減少が生じない。Wntシグナルはメカニカルストレスを分子シグナルとして伝達し、骨形成促進効果を引き起こすうえで重要である。

p53遺伝子を介したアポトーシス

不動・非荷重にしたマウスの骨では、骨芽細胞と骨細胞においてp53遺伝子を介したアポトーシスが誘導されている。p53遺伝子欠損マウスを不動・非荷重にしても、骨形成低下による海綿骨量減少が生じない。

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メカニカルストレスの欠如による骨形成低下に対する薬物治療

不動・非荷重にしたマウスにPTH(parathyroid hormone;副甲状腺ホルモン)を間欠投与すると、骨形成が促進し、海綿骨量が増加する。PTHの間欠投与による骨形成促進機序としては、①骨芽細胞前駆細胞の増殖と分化を促進する、②骨芽細胞と骨細胞のアポトーシスを抑制する、③持続投与と異なりPTH受容体の感受性脱失が生じない、④スクレロスチンを抑制する、等が報告されている。

抗スクレロスチン抗体を投与すると、骨形成が促進し海綿骨量が増加する。不動状態にある閉経後女性の血清スクレロスチン濃度は、一般閉経後女性と比べて有意に高値である。米国では、抗スクレロスチン抗体は骨粗鬆症治療薬として臨床試験段階にあり、不動・非荷重による骨量減少の病態に適した分子標的薬として期待されている。

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