10.骨質を規定するコラーゲン架橋

監修:東京慈恵会医科大学整形外科准教授 斎藤充先生
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骨粗鬆症における骨脆弱化の機序には、骨密度の低下とは別に骨質の低下が関与している。骨質の低下には、コラーゲン分子間をつなぎ止める架橋の異常―悪玉架橋の増加が影響する。現在、この悪玉架橋を骨質マーカーとした骨折リスク評価への試みが進められている。

コラーゲン架橋と骨強度

骨質を規定する因子としては、骨強度の維持に関わる骨コラーゲンがある。骨コラーゲン分子間をつなぐコラーゲン架橋は、遺伝的に規定された部位にのみ形成される善玉架橋(生理的架橋)と、無秩序かつ過剰に形成される悪玉架橋(AGEs架橋)とに分類される。善玉架橋は骨のしなやかさを保つのに対し、悪玉架橋の増加はしなやかさを失わせ、瀬戸物のように硬くて脆い状態にしてしまう。
加齢や酸化ストレスの亢進(高ホモシステイン血症)、持続的な高血糖状態(糖尿病)は、悪玉架橋を過剰に誘導するとともに、善玉架橋の形成を抑制する。

マイクロダメージと骨質因子

骨質因子の相互関係は、骨を鉄筋コンクリートの概念に当てはめるとわかりやすい。骨コラーゲン分子は「鉄筋」、コラーゲン分子間をつなぎ止める架橋は「梁」に相当する。鉄筋コンクリートの外壁に見られるひび割れは、鉄筋の老朽化やコンクリートの劣化などにより発生することが知られているが、この「ひび割れ」が骨のマイクロダメージに相当する。 近年の骨質研究の進歩により、マイクロダメージの発生・進展は、ミクロレベルの骨質因子である“悪玉架橋の過形成”に起因することが明らかとなった。
以上から、コラーゲン架橋の異常を調べることは、骨質の全体像を評価することにつながる。

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各種疾患と悪玉架橋ペントシジンの関係

悪玉架橋の本態は、AGEs(advanced glycation end products;終末糖化産物)の一つであるペントシジンである。大腿骨頚部骨折をきたした原発性骨粗鬆症例において骨生検を行い、コラーゲン分析を行った結果、骨コラーゲン中にペントシジンの過形成が生じており、骨が過剰に老化した状態にあることが見出された。また、2型糖尿病例では、高骨密度であっても骨折する例が多いことがメタ解析により明らかにされている。すでに動物モデルを用いた検討から、骨密度の低下を伴わない骨脆弱化がペントシジンの過形成や善玉架橋の低形成により惹起されること、さらに、その原因として、動脈硬化や心血管イベントの危険因子である血中ホモシステイン高値により誘導される酸化ストレスの増大、または持続的な高血糖状態(糖尿病)が原因となることが見出されている。

将来の骨折リスクを評価する新しい骨質マーカー

現在、骨コラーゲン中のペントシジン量と正の相関を示す血中・尿中のペントシジンの測定や、ペントシジンの過形成の原因となる血中ホモシステイン濃度の上昇を捉えて、将来の骨折リスクを評価する試みがなされており、骨密度のみでは評価が困難な、骨質低下による骨折リスクの上昇を非侵襲的に予測できるマーカーとして期待されている。また、骨粗鬆症例に対して骨質マーカーを用いたテーラーメード治療に取り組んでいる。 コラーゲン架橋に関する骨質低下のメカニズムや、それをもとにした骨折リスク評価は、日本が諸外国に先んじてエビデンスを発信してきた。本邦におけるさらなるエビデンスの蓄積に期待が寄せられている。

● 参考文献 Saito M, Marumo K:Osteoporos Int 21:195-214, 2010

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