9.骨粗鬆症性椎体骨折後の骨癒合不全の病態

監修:北海道大学大学院医学研究科脊椎・脊髄先端医学講座特任教授 伊東学先生
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高度な骨粗鬆症症例での椎体骨折では、脆弱化した骨梁が大量に破砕されやすく、骨折周囲に新生骨梁の架橋構造が構築されにくい。そのため、強固な骨癒合が完成せず、骨折椎体内にintravertebral cleftが形成され、脊椎の不安定性のため著しい痛みや神経圧迫を惹起する症例がある。

骨粗鬆症性椎体骨折後の椎体圧潰

骨粗鬆症性椎体骨折は、装具やギプスなどの安静維持でほとんどの症例が骨癒合すると考えられていた。しかしながら、その4割が進行性に圧潰し、 1割強が骨癒合せず(偽関節)、3%程度が神経障害のため歩行障害や排尿障害を呈するといわれている。

Intravertebral cleftとは?

骨粗鬆症性椎体骨折後に骨折治癒機転が阻害され、椎体圧潰が進行し、偽関節となると、椎体中央部に大きな間隙(intravertebral cleft)が形成され、脊椎は不安定化する。この不安定性が著明な腰背部痛と神経圧迫の原因となる。Intravertebral cleftの表面には骨組織は存在せず、表面は滑膜様組織で被覆されている。滑膜様組織の下層には線維性瘢痕組織と破砕した骨梁の断片(壊死骨)が層状に存在する。骨折椎体の中央部は瘢痕組織と壊死骨でほとんど置換された状態となり、正常な骨組織は骨折椎体の辺縁にわずかに残る。椎体と椎間板の境界にある骨性終板も菲薄化し、部分的に断裂している部分も存在する。椎体辺縁や椎体の後方部分に正常骨成分が残存することが多いが、圧潰が進行しcleft形成が進行すると、脊柱管に接した椎体後壁まで破壊は進展し、脊髄を圧迫する。以前、この病態は、圧潰椎体の血行が減少するためavascular necrosis(虚血性壊死)と表現されていたことがあったが、栄養動脈である分節動脈の途絶は椎体内あるいは周囲に形成される瘢痕組織によるものであり、血管自体の障害のため骨が壊死する病態とは異なる。このような圧潰した椎体でも静脈還流機構は残存していることが多く、この中に骨セメントを充填する椎体形成術の際には、開存している静脈系から椎体内容物やセメントが下大静脈を経由し、肺梗塞を起こす可能性がある。

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なぜ骨粗鬆症があると椎体圧潰が起こりやすいのか?

骨癒合メカニズムについては、骨粗鬆症の有る無しで異なるわけではない。しかし、骨粗鬆症によって力学的に脆弱な骨であることが、骨癒合過程での圧潰しやすさに関連すると思われる。骨粗鬆症のない椎体の場合、骨折線が椎体内に鋭的に入りやすく、骨折線周囲に旺盛な新生骨の増生が起こり、新生骨梁が骨折部から周辺に向かって旺盛に形成される。それが周囲の非骨折部位の骨梁と連続し骨折が治癒していく。それに対し、高度に骨粗鬆化した椎体では、椎体内に鋭的に骨折線が入ることはなく、脆弱な骨梁は軽度な外力で広範囲に破砕する。そして、広範囲に破砕された領域の周囲に新生骨を作る修復機転は働くが、脆弱であるがゆえに有効な骨梁の架橋構造が構築できないまま、次第に骨折椎体は壊死骨と線維性瘢痕組織で置換されていく。椎体辺縁部の修復機転が連続的にうまくつながった場合には、椎体圧潰の進行は阻止されるが、反復的な外力が継続された場合、癒合しかかった骨癒合は再度破綻し、壊死骨と瘢痕組織の増生を繰り返しながら椎体圧潰は進行する。そして最終的には、力学的に弱い部分である瘢痕組織内に亀裂が入り、高度な不安定性、耐え難い痛みや神経障害を惹起する。

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