12.骨形成の分子機構 ―力学的負荷とPTHの作用を中心に

監修:徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部生体情報内科学教授 松本俊夫先生
※監修者のご所属は、制作当時のご所属です。
テキストあり 画像サイズ:1385×1190pixel 画像形式:JPG

力学的負荷とPTHは、骨細胞のΔFosB発現とSmad1リン酸化を促進し、IL-11発現を促進する。IL-11はスクレロスチン、Dkkの発現を抑制し、Wnt/βカテニンシグナルの促進により骨芽細胞分化が促進され骨形成が高まる。

力学的負荷(メカニカルストレス)と副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone;PTH)の2つは、骨形成促進刺激の中で最も重要と言えるものである。力学的負荷は、骨のしなり、たわみなどを通じ、骨細胞(osteo-cyte)同士を繋ぐ突起が走る微小管内に液流を惹起し、これが骨細胞膜にせん断応力(shear stress)を生じさせる。骨細胞膜にはこのせん断応力を感知するストレス感受性陽イオンチャネル(stress-activated cation channel;SA-Cat)が存在し、液流に反応して細胞外Caの細胞内への流入が高まる。一方、PTHが骨細胞や骨芽細胞膜の受容体と結合すると、同じく細胞外Caの流入などにより細胞内Caイオン濃度が上昇する。

骨細胞内のシグナル伝達機構

細胞内Caイオン濃度の上昇は、一方でMAPキナーゼファミリーのERK(extracellular signal-regulated kinase)をリン酸化し、活性化ERKはCREB(cAMP-response element-binding protein)をリン酸化・活性化する。リン酸化CREB(pCREB)は核内に移行し、標的遺伝子プロモーター上のCRE領域に結合し転写を活性化する。骨細胞・骨芽細胞ではpCREBによりfosB遺伝子の転写が促進され、とりわけそのsplice variantであるΔFosBの発現が高まる。ΔFosBは、標的遺伝子であるinterleukin(IL)-11遺伝子プロモーター上のAP-1領域に結合し、JunDとヘテロ2量体を形成する。
細胞内Caイオン濃度の上昇は、もう一方でPKC(pro-tein kinase C)δをリン酸化し、活性化PKCδは骨形成因子BMP(bone morphogenetic protein)の細胞内情報伝達に関わる転写因子Smad1をリン酸化する。リン酸化Smad1(pSmad1)はIL-11遺伝子プロモーター上に存在するSBE(Smad-binding element)に結合するとともに、JunDのC端とも結合しIL-11遺伝子プロモーター上で転写因子複合体を形成し、IL-11遺伝子の転写が高まる。

IL-11によるWntシグナル阻害因子の発現抑制

IL-11は、IL-11受容体を発現する骨細胞・骨芽細胞に作用し、骨細胞でのSOST遺伝子の発現抑制によるスクレロスチン分泌の抑制や、骨細胞・骨芽細胞でのDkk遺伝子の発現抑制によるDkk分泌の抑制を介し、骨芽細胞およびその前駆細胞などに発現するWnt受容体、Frizzledおよびその共受容体LDL-related protein(LRP)5/6とWntとの結合によるWnt/βカテニン(canonical Wnt)シグナルを促進する。これにより、βカテニンのリン酸化によるユビキチン化とプロテアソームによる分解が抑制される結果、βカテニンの細胞内濃度が上昇して核内に移行し、骨芽細胞分化関連因子の転写促進により骨芽細胞分化が進む。

ダウンロードはこちら
テキストあり 画像サイズ:556×401pixel 画像形式:JPG
Wnt/βカテニンシグナルと骨芽細胞分化

脂肪細胞と骨芽細胞とは共通の間葉系前駆細胞から分化した細胞である。骨芽細胞の分化は、Runx2およびその下流で発現するOsterixにより骨芽細胞特異的な遺伝子の転写が高まることで促進される。一方、脂肪細胞の分化に必須の転写因子としてperoxisome proliferator-activated receptor(PPAR)γが知られている。C/EBPファミリーの転写因子はPPARγ遺伝子プロモーターに結合し、その転写活性を促進し脂肪細胞分化を促進する。

Wnt/βカテニンシグナルは、脂肪細胞分化に必須のPPARγの発現を抑制する一方、Runx2の発現および転写活性を促進し、骨芽細胞分化を促進する。一方、βカテニンシグナルを介さないnoncanonical Wntシグナルは、ヒストンメチル化酵素SETDB1を活性化し、ヒストンH3の9番目リジン(H3K9)メチル化による染色体修飾によりPPARγ遺伝子の転写を抑制することも報告されている。

●文献
1) O'Brien CA, Plotkin LI, Galli C et al:Control of bone mass and remodeling by PTH receptor signaling in osteocytes. PLoS One 3:e2942, 2008
2) Matsumoto T, Kuriwaka-Kido R, Kondo T et al:Regulation of osteoblast differentiation by interleukin-11 via AP-1 and Smad signaling. Endoc J 59:91-101, 2012
3) Takada I, Mihara S, Suzawa M et al:A histone lysine methyltransferase activated by non-canonical Wnt signalling suppresses PPAR-gamma transactivation. Nat Cell Biol 9:1273-1285, 2007

ダウンロードはこちら
関連の新着セミナー・講演会

脊椎外科の周術期における骨粗鬆症対策

19:00 - 20:00
兵庫医科大学 整形外科 准教授 圓尾 圭史 先生
11月
01
月曜日
19:00 - 20:00

第55回日本側弯症学会学術集会 イブニングセミナー1

17:10 - 18:10
信州大学医学部 運動機能学教室 教授 髙橋 淳 先生
11月
05
金曜日
17:10 - 18:10
閲覧履歴
お問い合わせ(本社)

くすり相談窓口

受付時間:9:00〜17:45
(土日祝、休業日を除く)

当社は、日本製薬工業協会が提唱する
くすり相談窓口の役割・使命 に則り、
くすりの適正使用情報をご提供しています。