4.骨折の治癒過程

監修:産業医科大学整形外科教授 中村利孝先生
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骨折治癒では、血腫形成、壊死組織除去、細胞増殖、基質合成、組織の分化が順序よく進行する。これらの過程には、PDGF、VEGF、FGF、TGF-β、BMP-2、-4、-7など多数の成長因子が関与している。

骨折の治癒においては、血腫形成、壊死組織の除去、細胞の増殖、基質の合成、組織の分化という5つの過程が順序よく進行して、骨と骨髄が再生される。

血腫形成、壊死組織の除去

骨折直後の組織反応は、他の組織損傷と同様に、出血による凝血塊(血腫)から始まる。血腫は骨と骨髄組織の欠損部を充填するとともに、骨膜を押し上げる(骨折直後)。貪食能のある白血球系の炎症性細胞が活性化され、単球はマクロファージになり、壊死組織を融解、除去する。骨折端では骨細胞も壊死し、骨小腔は空虚になる。血小板由来成長因子(PDGF)を含めた多数の成長因子が漏出し、凝血塊周囲には未分化間葉系細胞とともに、骨膜下と骨組織周囲および骨髄では骨芽細胞の前駆細胞が出現する。これらの細胞は、血管の損傷による局所での酸素欠乏が刺激になり低酸素誘導因子(HIF)を発現し、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を誘導する。VEGFは新生血管の分化を促進するとともに、骨芽細胞前駆細胞の分化も促進する。

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細胞の増殖、基質の合成

骨折後3~5日で、損傷部に誘導されてきた未分化間葉系細胞、骨芽細胞前駆細胞および新生血管により、損傷部の修復が開始する(修復前期)。血液供給により酸素濃度が豊富に維持される部位では、骨芽細胞前駆細胞が増殖、分化し、骨基質を合成、分泌するとともに、RANK-RANKL系のシグナル伝達が開始され、破骨細胞も誘導し、線維性の骨組織が作られる(仮骨)。この時期には、線維芽細胞増殖因子(FGF)、形質転換増殖因子β(TGF-β)、骨形成蛋白(BMP)-2、-4、-7などの成長因子の関与が著明になる。骨膜下の深部や骨髄内でも、血液供給が十分でなく酸素濃度が低い部位では、骨芽細胞前駆細胞が誘導されず軟骨細胞が出現してくる。軟骨細胞は増殖、分化し、軟骨基質を分泌して軟骨組織の塊となる。この軟骨組織塊は、周囲からの血流の供給とともに、成長期の骨にみられる成長骨端軟骨層と類似の機序により、線維性骨に置き換えられていく。こうして骨欠損部は、骨膜と骨髄側から線維性骨により充填される。出血-間葉系細胞誘導-血管誘導-骨・軟骨組織誘導-線維性骨の誘導と欠損部位への組織供給という一連の経過が進行するとともに、誘導される線維性骨の組織量は徐々に減少していく(修復中期)。

組織の分化

骨折による欠損部位が海綿骨様の構造をした線維性骨で充填されるとともに、線維性骨のリモデリングが開始する。破骨細胞に吸収され、新たに出現してきた骨芽細胞により層板構造を持つ骨組織に置き換えられていく。線維性骨のリモデリングでは、吸収される骨組織量は、形成される骨組織量に比べて少ない。このため、線維性骨の占める部分は層板骨に置き換えられながら、小さくなっていく(修復後期)。骨膜下の仮骨は小さくなり、骨髄では髄内の仮骨が縮小するとともに、正常な骨髄組織が再生してくる。皮質骨の欠損部位では線維性骨はリモデリングを繰り返しながら、皮質骨に置き換えられていき、骨折部の修復が終了する。

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